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「このホテルは13階建になっています。客室は4階から13階まであり、各フロアには10部屋しかありません。いずれもスイートルーム・オーシャンビューです」
フリント・ホーキンズ金田は、会議室仕様の大部屋で勿体ぶった演説をはじめた。
「何が始まるのかね?」
厚手コートの男が質問した。
「テレパシーテストです」フリント・ホーキンズ金田はにんまりと笑った。「皆さんの超能力で、100両金貨が置いてある場所を当ててもらいます。各フロアの一部屋だけに時価500万相当の金貨が入った箱がありますが、外れた部屋に入るととんでもない目に遭います」
「とんでもない目とは? ワニが口を開けているとか殺人鬼がいるとかじゃないだろうね」
厚手のコートの男はうまいジョークだろうとでも言いたげに、みんなを見回した。俺を含めて招待客たちは笑ったが、ホーキンズは笑わなかった。
「この島にしか生息していない毒蛇がいます。幽霊が出る部屋もあるし、ダニやノミの卵がベッドのシーツにびっしりと付着してる部屋もある。蠍が跋扈する部屋もありますよ」
「ウソだろ?」俺は思わずのぞけった。「まるでインディージョーンズだ」
「最高級のリゾートホテルで普通の授与式では、つまらないではありませんか。どのみち、後戻りはできません。どうしてもというのなら、ここまでの渡航費用と経費を支払っていただきますよ。お一人様500万円です」
ホーキンズ金田は嫌みぽっく言った。
「ばっかじゃないの? アタイたちはどうしようもない貧乏人なんだ。500万もあったら、日本でもっとまともな生活をできるよ」
ドーナツ顔負けのサングラスにショートパンツ姿の女の子が立ち上がって唾を飛ばした。
「まさにその通り」ホーキンズ金田はパチパチと手を叩いた。「ゲームに参加しますな?」
みんな頷いた。
早速、スタッフが集まってきて準備が始まった。
卓球台ぐらいのテーブルにグリーンのクロスが敷かれ、望遠カメラの放列ができ、ひな壇のギャラリー席が設けられた。
呆気にとられていると、どこからともなく黒いタキシード姿の若い女が登場した。年齢は二十五歳くらい、きりっとした目鼻立ちをした頭の切れそうな美人だった。
「きょうは、ようこそ」
彼女は深くお辞儀をすると、トランプカードをクロスの上に鮮やかな手さばきで、扇状に広げた。
「マジックショー? それともブラックジャックかな?」
俺が尋ねると、タキシード女は否定した。
「カジノではありませんが、ディーラーは努めさせていただきます。では、ルールの説明をしましょう」
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