3

1/4
前へ
/8ページ
次へ

3

「このホテルは13階建になっています。客室は4階から13階まであり、各フロアには10部屋しかありません。いずれもスイートルーム・オーシャンビューです」  フリント・ホーキンズ金田は、会議室仕様の大部屋で勿体ぶった演説をはじめた。 「何が始まるのかね?」 厚手コートの男が質問した。 「テレパシーテストです」フリント・ホーキンズ金田はにんまりと笑った。「皆さんの超能力で、100両金貨が置いてある場所を当ててもらいます。各フロアの一部屋だけに時価500万相当の金貨が入った箱がありますが、外れた部屋に入るととんでもない目に遭います」 「とんでもない目とは? ワニが口を開けているとか殺人鬼がいるとかじゃないだろうね」  厚手のコートの男はうまいジョークだろうとでも言いたげに、みんなを見回した。俺を含めて招待客たちは笑ったが、ホーキンズは笑わなかった。 「この島にしか生息していない毒蛇がいます。幽霊が出る部屋もあるし、ダニやノミの卵がベッドのシーツにびっしりと付着してる部屋もある。蠍が跋扈する部屋もありますよ」 「ウソだろ?」俺は思わずのぞけった。「まるでインディージョーンズだ」 「最高級のリゾートホテルで普通の授与式では、つまらないではありませんか。どのみち、後戻りはできません。どうしてもというのなら、ここまでの渡航費用と経費を支払っていただきますよ。お一人様500万円です」  ホーキンズ金田は嫌みぽっく言った。 「ばっかじゃないの? アタイたちはどうしようもない貧乏人なんだ。500万もあったら、日本でもっとまともな生活をできるよ」  ドーナツ顔負けのサングラスにショートパンツ姿の女の子が立ち上がって唾を飛ばした。 「まさにその通り」ホーキンズ金田はパチパチと手を叩いた。「ゲームに参加しますな?」  みんな頷いた。  早速、スタッフが集まってきて準備が始まった。  卓球台ぐらいのテーブルにグリーンのクロスが敷かれ、望遠カメラの放列ができ、ひな壇のギャラリー席が設けられた。  呆気にとられていると、どこからともなく黒いタキシード姿の若い女が登場した。年齢は二十五歳くらい、きりっとした目鼻立ちをした頭の切れそうな美人だった。 「きょうは、ようこそ」  彼女は深くお辞儀をすると、トランプカードをクロスの上に鮮やかな手さばきで、扇状に広げた。 「マジックショー? それともブラックジャックかな?」  俺が尋ねると、タキシード女は否定した。 「カジノではありませんが、ディーラーは努めさせていただきます。では、ルールの説明をしましょう」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加