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 その日の夕方。  負け組は一階ロビーに併設されたダイニングに招待された。 「金貨をゲットした人たちは最上階のレストランで祝賀パーティです。あなた方は失敗したので、こちらでの食事になります。食後にはリベンジがあります」  世話役の小林アキラが我々を迎えた。  俺はハズレ組の中にエール交換した彼女がいないことに気づいた。 「ドーナッツみたいな眼鏡をかけた女性は? 彼女は的中させたのかな?」 「いいえ。最悪の部屋を選んでしまったみたいで、行方不明です。実はこのホテルには神隠しの部屋があるのですよ」  俺は冗談だと思った。ほかの連中も、ハズレてひどい目にあったが、部屋のの居心地はすこぶる快適だという。  とりあえず、俺たちは海の幸をふんだんに使った海鮮料理に舌鼓を打った。  食事が終わると、外へ連れ出された。  ルビー色の夕雲がアメジスト色の空に浮かんでいる。もうじき、南国の夜が訪れるだろう。 「あと少しでホテルの全ての照明が落とされます。満天の星空をしばしお楽しみください」 「リベンジはどこで? まさか星空の下?」  俺は空を見上げながらきいた。 「はい、その通りです。照明が落とされたあと、十秒後に最上階の窓にキャンドルライトが灯ります。今度はそこが舞台です」 「昼間のテレパシーテストにはカラクリがあったのか」 「タクトの動きと部屋の位置がわかっていれば、実に簡単に答えられたのですよ。的中された方は、皆同じ手法でした」小林アキラは薄く笑った。「当ホテルのパンフレットは読みましたか?」 「ああ」  俺は、当選通知書と同封されていたパンフレットや宿泊券のことを思いだした。 「ホテルの客室位置はどうなっていたか、覚えていますか」 「通路をぐるりと一周できる配置だった」  俺はハッとした。  ホテルの真ん中は吹き抜けになっている。吹き抜け空間を囲む形で客室が10室並ぶ。つまり、ハート10もスペード10もダイヤ10もクラブ10も皆同じ。その図柄配置だ。マークは縦に4個ずつ、上下に1個ずつ描かれている。タクトの先端は、ぐるりと一周する部屋の位置を指していたのだ。要するに、客室配置図を10の図柄と重ねればいいわけだ。  簡単なネタバレに腰が抜けそうになった。 「おわかりになったようですな。しかし、リベンジはもっと難しいです」 「外したら?」 「海の藻屑です」 「ふーっ」  俺は息を吐きだした。  どうせ後戻りはできないのだ。俺は覚悟を決めた。  その時、ホテルの照明が消えてあたりは闇に包まれた。    
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