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「ご、ごめん」
「誰?」
けいちゃんに聞かれて、あたしはローテーブルの上のスマホを取って、そのメッセージを見る。七海だった。
「七海。明日会えない?って」
珍しいな。七海がこんな突然。しかも、こんな夜に。
何か、あったのかな。でも、そんなことは一言も書かれてない。レスを迷ってると、けいちゃんが言った。
「木塚か。せっかくのお誘いだから行ってくれば? 卒業以来、バタバタしててゆっくり会えてないでしょ」
「うん…でも、いいの?」
「俺に遠慮しなくていいよ」
あたしがスマホを操作してると、またけいちゃんに後ろから抱きすくめられた。
「けいちゃん、打ちにくい」
「じゃ、電話にすれば?」
…もっとやりにくいもん。OKの返事とスタンプを送ると、七海から待ち合わせの時間と場所の提案が送られてくる。
「10時にそごうの時計前…もうちょっと遅い方がいいかな」
「千帆寝坊だもんね」
――11時は?
と返すと、すぐに了解、と送られてきた。あとは、明日会って話せばいっかな。おやすみ、のスタンプを押して、スマホはテーブルに戻して、けいちゃんの方に顔を向けた。
「えっと、じゃあ明日お出かけしてくるね」
「ゆっくりどうぞ」
けいちゃんはにこやかに頷いてから、言葉を探すように「ん~」と唸りながら、頬を人差し指で引っ掻きながら続ける。
「つーかさ、千帆。そんなに俺に遠慮しなくていいよ。友達との約束も――さっきのサークルの件も。別に、あのサークルじゃなくても、気になるのがあったら、どんどん参加してみればいいと思う。――結婚してるから、ってやりたいこと我慢させるのは、俺が嫌」
けいちゃんに言われて、はっとなった。自覚なかったけど、けいちゃんにしてみれば、あたしが自己犠牲でいろんな欲求抑え込んでるようにみえたんだろう。逆に、あたしだって、けいちゃんがあたしのせいで、やりたいこと出来ない、なんて思われたら嫌。
「ふたりで楽しむために結婚したのに、我慢し合ってたんじゃ、意味ないでしょ? だから――寧ろ、俺のことや家のことは二の次でいいんだよ、千帆。大学生活や友達との交流楽しんで」
「うん…」
「無理し過ぎてある日突然、こんな生活やってらんない、って爆発される方が俺には怖いから。頑張り過ぎないくらいの方がいいんだよ」
なんか、けいちゃんらしいな。やっぱりけいちゃんはオトナだ。自分の経験も踏まえた上でのアドバイス、あたしにきっちり投げてくれる。
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