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デパートと駅への近道の間の階段をあがって、外の道に出る。4月らしい暖かな陽射しと青い空が広がっていた。特に行く当てもなく。ぶらぶらと互いの近況を報告しながら散歩。
高校時代は毎日会ってたのに、1ヶ月ぶりの再会だから、お互い近況を話してるだけでも、話すことが追っつかない。話しながら、ひと駅分歩いちゃって、辿り着いた公園のコンクリの階段に腰掛けた。
「お昼、どうしよっか」
「あたしパンケーキ食べたい」
こないだけいちゃんに食べたい言ったら、「それはおやつだろ」って怒られたから。スイーツ仕様じゃないパンケーキだってあるのに。
「あ、いいねえ。この辺あるかな」
けど、七海はすぐに賛成してくれて、自分のスマホで近くのお店を探してくれた。
人気のお店らしくて、30分待ち。でも七海と一緒だと、すぐに時間が経っちゃう。別々の頼んでシェアして、感想言い合って…けいちゃんと一緒にいる時とは、全く違う楽しさ。
カラオケやって、またカフェでお茶して、七海とは地下鉄の駅のところで別れた。
すごく楽しかったのに、何でかな。
早くけいちゃんのところに帰りたい。駅からの歩き慣れた道を、早足に歩く。おうちの灯りが見えてきて、あたしは駆け足で玄関のアプローチの階段を上がって、ドアを開けた。
「ただいま」
「おかえり、千帆」
すぐに笑顔で迎えてくれたけいちゃんに、あたしはぎゅって抱きつく。
「楽しかった?」
「うん」
あたしがけいちゃんの顔を見上げて頷くと、けいちゃんは眉を上げた。
「千帆、メイクしてる? 朝と顔違う…」
「七海に教えて貰った~。春メイク。ついでにちょっとだけお化粧品も買っちゃった」
「へえ」
けいちゃんは興味深そうに、あたしの頬を両手で挟み込んで、まじまじと眺める。今までは、ファンデとグロスくらいだったから、アイメークもしっかりして、チークも口紅もした今の状態だと、かなり印象変わるハズ。その印象が「綺麗」なのか「派手」なのか…。
けいちゃんに凝視されるの、めちゃはず。
「化けるなあ」
「えー、感想それえ?」
「うそうそ、可愛いよ。けど、口紅は家の中ではいらなーい」
親指の先でヌードピンクの口紅を拭ってから、けいちゃんはあたしにちゅってキスをした。
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