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5分早く着いたのに、七海はもう来てた。考えてみれば、会うのは卒業式以来、話すのも、あの妊娠疑惑の時以来だ。 「久しぶり。その節はお世話になりました…」 先日の妊娠疑惑騒動について改めて謝罪すると、七海は「良かったね」って笑った。 「ちぃがママなんて想像つかないもんなあ」 「あたしもです」 パパけいちゃんは、渚ちゃんへの態度見てたら、想像つくんだけど。 「ねえ、ちぃ。最近酒井に会った? もしくは連絡取ってる?」 そして七海は七海で何か気になることがあるのか、珍しい名前を出してきた。 「え? 酒井くん?」 懐かしすぎる名前に思考が止まった。卒業以来、ずっとご無沙汰だ。でも、どうして七海が酒井くんを気にするんだろう。 「会ってないし、連絡もとってないよ。何かあった?」 「ううん、ならいいの。ごめんごめん。酒井の話は忘れて」 「えーなんか色々気になる」 「いや、ホント話すようなことは何もないから」 七海はそう言い切ったけど、まだ釈然としない。七海って、どうでもいい人のこと、わざわざ話題に出したりしないもの。でも、本人が言わない、って決めたことをあっさり覆してくれるキャラでもないんだよねえ。 クールで凛とした、七海のそういうとこ、あたしは好きだけど。 「大学どう? ちぃ、友達出来た?」 酒井くんの話はもうするつもりがないのか、七海は話題を変えてきた。 「うん、気の合いそうな子がいる。サークルも誘われてるんだけど、迷ってて」 「へえ、どんなサークル?」 「ジャズのサークルなの」 「ちぃが?」 やっぱり意外なんだ。 「遠藤ちゃんは? 反対なの?」 「ううん、けいちゃんはやりたいことあるなら、俺のこと気にしないでやっていい、って言ってくれてる。あたしが、迷ってるの」 学校と家だけでいっぱいいっぱいのあたしが、あれもこれも欲張り過ぎかな。けど、あんな風に仲間と音楽通じて一体になれたら、すごく楽しそう。 もう1回くらい、萌ちゃんと一緒に見学行ってみようか、それとも他のサークルも覗いてみよっかな。 「七海は最近どう? 美容学校、カッコいい人とかいないの?」 「私、イケメン苦手だもん。美容学校に通う男なんてナルの巣窟だよ」 「はは、は…」 毒舌ぶりは相変わらず健在だった。 七海って、彼氏作らないのかなあ。あたしにしてくれるアドバイスは的確かつ冷静だから、恋愛経験が全くないわけじゃなさげのに、どうしてか七海はあたしに恋バナはしてこない。 「七海、いい人できたら教えてよ~」 「あんたのとこほど、ネタが豊富じゃないと思うけど」 「……」 教師と生徒の禁断の恋で、今は学生妻。すいませんねえ、ネタの宝庫で。
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