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やっばい、遅くなっちゃった。電車がホームに滑り込むと同時に、あたしは電車から降りて、エスカレーターを駆け上がる。
けいちゃん、もう帰ってきてるかな。すぐにお暇するつもりだったのに。セッションが始まっちゃって、抜けるに抜けれない雰囲気になってしまったのだ。
定期券を自動改札にかざして、駅舎の外に出たところで、見覚えのある車を見つけた。あれ? 一瞬足が止まったと同時にスマホのバイフがカバンの中で震える。
ロータリーの車の中の人と、スマホのメール画面を交互に見た。
――迎えに来ちゃった。
けいちゃんてば、甘いなあ。
でも嬉しい。大好きって心から思えるのは、やっぱり世界にひとりだけ。あたしはけいちゃんの車に駆け寄った。
「遅かったんだね、千帆」
特に咎めるでもない調子で言って、けいちゃんは車を出す。
「うん、ごめんなさい。友達の付き合いで、サークルの見学してたら遅くなっちゃった…帰ったらすぐゴハン…あれ?」
喋りながら、フロントガラスに映る景色に違和感。あれ、道違う…。
「けいちゃん、うちこっちの道じゃ…」
「わかってるよ。もう遅いし、明日休みだし、どっかで食っていこ?」
「ええっ、いいよお。あ、じゃあスーパー寄って! お弁当買ってこ? 今なら、お惣菜安くなってるかもしれない」
真剣に言うと、けいちゃんはぷぷっと吹き出した。
「お前随分、所帯染みたね」って…ひどい。頑張って、家計とキッチン預かってるのに。
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