0・大好きなモカ

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0・大好きなモカ

久しぶりにモカの夢を見た。 ふわふわのモカの毛が、頬を擦って来る。 きっと尻尾を振りながら、モコモコの体で、ベッドに潜り込んで来てるんだ。早く起きてよって。 忙しなく動く短い尻尾も、可愛くて愛おしい。 「もう……モカ……。くすぐったいよ……。 ……うん、わかったから。……ふふっ、止めて……。……わかった、お散歩行くから、もう少し寝かせてよ」 くすぐったいのに、気持ちよくて、なかなか目を開けられない私に、待てないモカは散歩に連れて行けとしつこく絡んでくる。 もうすぐ、ぺろぺろって、鼻の頭を舐め出すんだよな……そうすれば私が起きざるを得なくなるって知ってて。 真っ黒な、その幼気な瞳で見つめられたら、もう逆らうことなんて、出来ない。 モカに起こされる週末の朝が、私にとっては一番の癒しで、幸せな時間だった。 大好きなモカ。 フワモコのモカ。 小学生の時からずっと一緒で、ずっと仲良しで、一番の癒しだった。 トイプードルのモカ。 小さな体のくせに、私にとっては絶大な存在だった。 三年前に亡くなって、泣いて泣いて泣いて暮らした。 あの頃は逢いたくても、夢にさえ出てきてくれなかったのに、久しぶりに会えたね。 会いたかったよー、大好きなモカ。
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