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「いいことに決まってるじゃん。青春の象徴だよ。学校さぼってピクニックなんて!」
「青春ねえ。そんなものは振り返ってから、ああ、あれは青春だったな、って気づくもんだろ」
「それもそうだけど、そうじゃなくて。やってる最中にも青春してるなあ!って感じる瞬間があるでしょ。それを味わいたいの。ひろ君と」
「わかるよ。でも平日じゃなくて日曜にしよう。休みとってよ」
宏文はいいながら、枕元に置いてあったスマホを取った。時間を確認する。まだ大丈夫、一限に間に合う。さおりはキッと宏文をにらみ、憤慨した。
「わかってない!講義をさぼる、っていうのがいいの!大学なんてみんなさぼってるよ。ひろ君のさぼり童貞!」
「さぼり童貞って……さぼったことくらい俺もあるよ」
勢いで言い返した宏文は、さおりのきらきらした目に失言だったと気が付いた。彼女は大きな目を輝かせ、身を乗り出した。
「あるの?いつ?どうしてさぼったの!?」
こうなったら最後まで話さないとさおりは納得しないだろう。もめて講義に遅刻するのは嫌だった。宏文はもう一度スマホを確認する。
「……大した話じゃないけど」
宏文は苦い気持ちで話し出した。
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