さぼり日和

2/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「いいことに決まってるじゃん。青春の象徴だよ。学校さぼってピクニックなんて!」 「青春ねえ。そんなものは振り返ってから、ああ、あれは青春だったな、って気づくもんだろ」 「それもそうだけど、そうじゃなくて。やってる最中にも青春してるなあ!って感じる瞬間があるでしょ。それを味わいたいの。ひろ君と」 「わかるよ。でも平日じゃなくて日曜にしよう。休みとってよ」 宏文はいいながら、枕元に置いてあったスマホを取った。時間を確認する。まだ大丈夫、一限に間に合う。さおりはキッと宏文をにらみ、憤慨した。 「わかってない!講義をさぼる、っていうのがいいの!大学なんてみんなさぼってるよ。ひろ君のさぼり童貞!」 「さぼり童貞って……さぼったことくらい俺もあるよ」 勢いで言い返した宏文は、さおりのきらきらした目に失言だったと気が付いた。彼女は大きな目を輝かせ、身を乗り出した。 「あるの?いつ?どうしてさぼったの!?」 こうなったら最後まで話さないとさおりは納得しないだろう。もめて講義に遅刻するのは嫌だった。宏文はもう一度スマホを確認する。 「……大した話じゃないけど」 宏文は苦い気持ちで話し出した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!