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「そうなの。なーんか、急に嫌になって。朝起きた途端、あ、今日学校行きたくないなって思って……」
「あ、俺と同じだ」
「本当?なんか毎日毎日疲れるよね。同じような内容のテストやってさ」
町口はふてくされたように言う。彼女のそんな態度は初めて見る。新鮮だった。町口は胸元の赤いリボンを指先でいじる。
「夢の中でも電卓叩いて、合わない、合わないって泣いてるの私」
「それは……きつそう」
宏文は最近夢も見ずに熟睡しているので、悪夢にうなされる町口の気持ちは想像するよりほかになかった。ひねり出した語彙力に欠けるセリフに、町口はそれでも嬉しそうに顔をほころばせた。
「そうなの、きっついの。心が休まる暇がないって言うか……早く検定終わればいいのに」
「俺もそう思う」
「だよねえ!」
町口は楽しそうに笑った。
「ねえ、香川君。今日学校行くのやめない?」
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