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「という経験が俺にだってあります」
宏文が話し終えるころには、さおりはあからさまに不機嫌になっていた。冷たい目で床を見つめていて、宏文に視線をくれない。
「ふーん。そんなラブラブな相手がいたなんて知らなかった」
「別にラブラブじゃない。この後親にも教師にもめっちゃくちゃ叱られて、俺と町口は接触禁止になったんだよ」
「えっ」
さおりは声をあげ、宏文を見た。宏文は困ったようなあきらめたような表情で、仕方なかったんだ、とつぶやく。
「町口はいいとこのお嬢さんだったからな。学校さぼったり母親からの電話無視したり、その全部俺のせいだってことになって」
「話を聞く限りではそそのかされてるのひろ君の方なのに?」
「そそのかされたわけじゃない」
「どっちでもいいけど。えー、でも悔しい。町口さんとは学校さぼるのに、私とはさぼらないなんて嫌!」
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