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ボクの彼氏の名前は、鬼頭頼人。
彼との出会いはまさに運命的なものだった。
2か月とちょっと前。
和泉ちゃんたちと出掛けた夏祭りの帰り道。他の高校の不良グループに難癖を付けられ、絡まれていた僕らを助けてくれたのが彼だった。
ぶすっとしてて、一切笑わず怖そうな彼に何を勘違いしたのか、和泉ちゃんたち、ヤのつく人だよ、きっと。そうヒソヒソ話しをしてて、ありがとうございました‼と礼を述べてそそくさと彼の許を立ち去ろうとした。
でも、何故か、僕の足は、接着剤で地面にくっついたかのように全く動かなかった。
「ごめん、先に帰ってていいよ」
和泉ちゃんたちを巻き込む訳にはいかない。
「ユキがそう言うならーー」
心配そうに何度も振り返る和泉ちゃんたちを、精一杯の笑顔で見送った。
夜になってもなお、昼間の蒸し暑さを引き摺る、ムシムシとした生温い風が背中を吹き抜けていく。
たらりと、一筋の汗が額から溢れ落ち、ごくりと生唾を飲み込むと、喉にピリピリとした痛みが走った。
そんな僕に、彼は優しい眼差しを向けてくれた。
「そんなに、怖がらなくてもいい、大丈夫だから。顔が怖いのは、もともとでーーごめんな、怖い思いをさせて」
急に、深々と頭を下げてきたから、面食らった。
あれ⁉
何で、謝るの⁉
どうして⁉
「俺の名前は、鬼頭頼人だ。ユキって、素敵な名前だね。君さえ良ければ付き合ってくれないか?」
「へ⁉」
「君に一目惚れしたんだ。他に理由はない」
事態を上手く飲み込めず、パニック寸前の僕に、彼は、しれっとして更に言葉を続けた。
出会って僅か5分あまり。
まさか、初対面の彼に告白されようとは・・・。
でも、待って‼
僕、見た目男だよ。
どこにでもいるなんの取り柄もない、ごく普通の。容姿だって、十人並みだし。可愛くないし‼
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