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「悪いけど携帯、貸してくれるか?」
「携帯?」
「俺の番号を登録しておくから、気が変わったら電話をくれ。速攻で削除しても構わないが、俺が帰ってからにしてくれ」
「何でですか⁉」
「だってヘコむだろ・・・普通」
彼、耳まで真っ赤にしてた。
爪先立ちでその顔を覗き込むと、バツが悪そうに慌てて逸らした。
見た目、怖いけど、根は真面目で、優しいのかも。
彼を信じ、携帯を渡すと、片手で操作しすぐ戻してくれた。「じゃあ、待ってるから」そう言うと颯爽とこの場から立ち去った。
すぐ削除しようと思ったけど、彼と話しがしたくなって、数日後、僕の方から連絡を入れて、次の日からお付き合いが始まり、一週間後には、家出をして、彼の住むアパートに押し掛け、同棲が始まった。
だって彼、僕が同性である事を知っても、気色が悪いとは決して言わなかった。
ーだって、ユキはユキだろ?
俺が一番可愛いって思ってんだから、それでいいだろう?ー
和泉ちゃんたちに言わなかったけど、僕は、もしかしたら、”みお”っていう子の身代わりなのかもしれない。
彼、寝言で、何度かその子の名前を口にしていたから。きっと、そう。
だから、いつもキスまでで。
えっちしてくれないのかも。
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