184人が本棚に入れています
本棚に追加
和泉ちゃん達の行動は素早かった。演劇部に和装の服を借りに行ってくれた。
「これ、着物ドレスっていうんだって、かわいいでしょう‼」
「ユキには絶対、紫色が似合うと思うの」
着物の様に、胸の前で襟を合わせ、丈がかなり短めの、フリフリのワンピースが、ひらひらと宙を舞う。
「ちょっと待って‼僕がこれ着るの?」
「当たり前」
「だって、僕、男だし、似合う訳ないよ」
「半分は女の子でしょう、ユキ」
和泉ちゃんの言う通りだ。
大好きな彼に振り向いて貰いたいもの。
いっぱい好きって言われたいし、可愛いっても言われたい。半分は女の子だもの。
少しくらいキュンキュンしてもいいよね。
「ありがとう、ちゃんとクリーニングに出してから返すね」
「ユキ、頑張るのよ‼」
「うん」
和泉ちゃんたちにお礼を言って、受け取った着物ドレスを紺色のスクールバックの中にそっと仕舞い込んだ。
「ただいま・・・あれ!?」いつもいない彼が珍しく早く帰って来ていた。
「お帰りユキ」
玄関を開けると笑顔で出迎えてくれた。彼の長い足に小さな女の子がしがみついていた。
目がくりくりしてて、すごくカワイイ。目尻の少し垂れている所が彼に何となく似てるかも。
三才くらい・・・かな?
「こんにちわ」って挨拶したら、ぷいっと顔を逸らし、彼の後ろに隠れてしまった。
「この子は・・・」
「わたしのパパ‼」
「へぇ~~そうなんだ。パパって・・・!?えっ!?エェェ--‼」
腰を抜かすほど、吃驚して声を上げた僕に、その女の子は、頬っぺたをこれでもかと膨らませ、睨んできた。
最初のコメントを投稿しよう!