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「園長先生だよ」
「えんちぉセンセ⁉ふぅ~ん。れんね、おはなのセンセともなかよしなんだよ」
「お花の先生⁉」
「パパもだいすきなんだよ、おはなのセンセ」
蓮がまた突拍子もないことを口にし始めた。
「お花のセンセって⁉」葵の眉間にどんどん皺が寄っていく。
「あ、あの、大澤小の用務員さん。あっ、でも、知らないか」
なんで、葵に気を遣わないといけないのか。別にやましいことないのに。
「毎年、『花いっぱい街作りコンクール』で、表彰されている小学校だろ。この前、新聞に掲載されていた。そこの、用務員、随分若い気したけど」
「おはなのセンセ、すっごく、かっこいい」
蓮のニコニコの笑顔に対し、葵の顔が、どんどん恐くなっていく。葵の機嫌を損ねる事なんかしたかな⁉全く、身に覚えがない。
「れ、蓮、そろそろおうちに帰ろう」
そうだ、この手があった。
「えんちぉセンセと、いっしょにかえるの」
「いゃあ、その、園長先生、忙しそうだし、パパと帰ろう」
「やぁだ」
蓮はぶんぶんと頭を振って、葵の手首にぎゅっとしがみついた。
「れん、おなかすいた」
「じゃあ、園長先生と、パパとで、ご飯食べて帰ろうか⁉」
「うん‼」
蓮につられ葵も笑顔になったけど、逆に、それが怖くて。意外と葵って多重人格の所があるから。たまに何を考えているのか分からなくなる。
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