蓮の心、親は知らず

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迎さんが紙袋を差し出した。 「蓮くんと約束した花の苗です」 「そうなんですか⁉すみません、全然知らなくて」 受け取り中を覗くと十センチ程に育った苗が植木鉢に植えられていた。 「何の花かは、咲いてからのお楽しみです。育て方をメモした紙、入れておきました」 「ありがとうございます。息子に渡します」 迎さんに会釈して、車に乗り込んだ。 彼は笑顔で見送ってくれた。 夕方、息子を迎えに行った時その苗を見せると蓮のヤツすごく喜んでいた。 「パパ、紙」 「あっ、そうだ、これないと、育てられないな」 蓮から、メモを貰い、中を広げると、そこには、育て方でなく、080から始まる携帯の番号が書かれてあった。 迎さんの⁉要は、分からなかったら、聞いてくれ、そういう事なのかな。 あまり、深く考えず、それをスボンの後ろのポケットに捩じ込んだ。 「こら、蓮」 なんで、いつも、風呂上がりに服を着るのを嫌がるのか、逃げる息子を追い掛けながら、考えてみるも、さっぱり分からない。 元カミサンに聞くのが、手っ取り早いが、いつの間にか、携帯の番号が変わって連絡先が分からないし。 電話⁉ あぁ、そうだ、迎さんに電話しないと。 「蓮、パパ、電話するから、ばあばに着替え渡しておくから、着たくなったらおいで」 どこにいるか分からない息子に向かって話し掛け、リビングにいたお袋に、着替えを頼んだ。 「あら、ここで、しゃべっていいのに。もしかして、真生、新しい彼女⁉」 「そんな訳ないだろ。仕事の電話」 「本当に、色気のない息子よねぇ。蓮の為にも、一日も早く、再婚を考えたら⁉」 「大きなお世話です」 お袋のお節介は、俺と、蓮の為、それは分かってる。 もし、俺が再婚して、その人に蓮がなつかなかったら。 もし、子供が出来て、それまでの態度が一変し、その人が、蓮に辛く当たらないか。 それを考えると、今の生活で充分幸せ、なのかもしれない。
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