鉢合わせ

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鉢合わせ

葵が連れていってくれたのは、幹線道路沿いにあるファミレス。あまり、連れてきたことがない、と俺が言ったから。 幸せそうに食事を囲む家族連れを見るのが、嫌で。 なんで、蓮のママいないの⁉と、息子に言われるのが、なにより一番辛い。 蓮は、好きなお子さまランチのカレー。葵は、ビーフシチュー。 「真生は⁉」 「蓮、食べるときは食べるんだけど、食べないときは食べないから。なんか、匂いに敏感で、自分の鼻が受け付けないのは、基本、駄目だから。後で注文する」 蓮は、めんどくさい。 こだわらなくてもいい事に、こだわり、少しでも気に食わなければ、泣いて。 下手したら、朝から晩まで、一日中、泣いている事もある。 「こら、待て蓮」 じっとしてられないのも、蓮の特性で。 注文するや否や、席を立ち、店内をうろうろし始めた。 俺や葵に掴まり、席に戻っても、また、うろうろ。 「あっ!!」 蓮が、何かに、気付き、駆け出した。 「蓮、走るな」 俺の忠告は、当然ながら、息子の耳には届いていない。 案の定、目の前にいた、コップを手にした若い男性にその勢いで、突っ込んでいった。 ガッシャーン。 コップが割れる音が、店内に響き、それまで、騒々しかった店内が一瞬静まり返った。 「す、すみません。本当に、すみません」 その男性に頭を下げ、謝り続けた。 「パパ、お花のセンセ」 「はっ⁉」 息子の口から出たのは予想もしていなかった人で。おそるおそる頭を上げてみた。 「迎さん!」 息子の言った通り、目の前にいたのは、間違いなく彼で。 蓮は、嬉しそうに、尻餅をついた彼に抱き付いていた。 「センセ、センセ」 「ダメだよ、走っちゃ」 迎さんは怒るどころか、終始笑顔で。 やがて、その視線は、俺へと向けられる。 「佐田さん、奇遇ですね」 「あっ、は、はい。まさか、こんな所で出会うとは」 「そうですね」 その時、大丈夫⁉そう言いながら、彼に駆け寄る若い女性がいた。蓮は、きょとんとして、その女性を見上げていた。 「真生、大丈夫か⁉」 葵も来てくれた。 「蓮、おいで」 葵の言葉に、蓮は、 「えんちぉセンセ、お花のセンセ」
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