蓮の心、親は知らず

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蓮の心、親は知らず

今日も、おはようございます!と、元気に給食の米飯と、パンを小中学校に配達する。 いつもと違うのは、隣に蓮がいないこと。 今朝、蓮を預けてから出勤しようと、バタバタしていた時にチャイムが鳴って。誰だ、この忙がしい時に!とムカつきながら、玄関のドアを開けたら、葵が立っていて吃驚した。 「蓮、園長先生と一緒に幼稚園行くよ」 彼は、息子をわざわざ迎えに来てくれた様で。 「えんちぉうセンセ~」 蓮は、葵の姿を見るなり、走っていった。 「葵、これ、蓮の弁当と、荷物」 黄色いリュックサック型の園鞄と、手提げ袋を葵に手渡した。 「真生の手作り弁当⁉いいなぁ、俺の分も頼もうかな⁉」 「残念ながら、俺が作れんの卵焼きくらい」 「なんだ」 「期待に沿えなくてすまんな」 「いいや、別に」 昨日、あんだけ、意地悪され、文句の一つでも言ってやろうか、そう思ったものの。 「蓮、頼むな」 「あぁ、任せておけ」 蓮の父親として、園長である葵に頭を下げた。 蓮がいないと、静か過ぎて、逆に落ち着かない。 考えるのは息子の事ばかり。先生たちの言うことを聞いてるかな、逃げずにいるかな、泣かずにいるかな、クラスのお友だちとはけんかしてないかな。 ここまできたら、もはや、親バカだ。 いつもの様に、最後の配達先は、大澤小学校。 「息子さん、幼稚園に⁉良かったですね」 「親は寂しいけど、揉まれて強くなるのも、息子さんの為になりますよ」 調理員の二人と会話をしていると、その脇を、迎さんが颯爽と、通り過ぎていった。 「じゃあ、すみませんが」 二人に頭を下げ、運転席側に回ると、そこには紙袋を手にした迎さんが待っていた。 「おはようございます、昨日は、息子がご馳走になり、ありがとうございました」 「そんな大袈裟にしなくても・・・それより、その、隣にいた、宮尾さんでしたっけ⁉彼とはどういう関係で・・・すみません、立ち入った事聞いて」 いつもの迎さんではなかった。 何か、落ち着きがなくて。 「葵・・・宮尾葵っていうんです。彼とは幼馴染みで、産まれた時から、ずっと一緒だったんです。お互いの家族も仲が良くて」 「そうなんですね。良かった」 迎さんが、急に笑顔になった。 「そうだ、これ」
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