夢やぶれて

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 スリッパに履き替え、古びた木の廊下をギシギシと軋ませ歩くと、積もった埃の感触が足裏に伝わる。  廊下の左側の障子戸を開けると、これまた窓枠に嵌め込まれた障子戸から差し込む陽光に薄く照らされた居間があった。  スリッパのまま黄ばんだ畳に上がり込み、窓の障子を開け、その先の窓ガラスも開け放つ。  潮の香りを運んだ柔らかい風が、すえた臭いを押し退けるように居間を満たしていく。  俺はその調子で、次から次へと窓を開け放っていく。居間から台所に続くドアを開け、そのまま台所の窓も開ける。廊下を挟んだ仏間、その奥にある祖父母の寝室、廊下の突き当たりにある風呂場とトイレ。一階全ての窓を開ける。二階はどうせ使わないので触れないことにした。  祖父母の寝室から布団を一組運び出し、砂利の庭にある物干し台に引っかけて、布団叩きでバシバシと叩きまくる。  そうこうしているうちに電気、ガス、水道、それぞれの係員が来て開通も終わり、あとは掃除だけになった。  時刻はもう三時になろうとしていた。  俺は今日のところは居間と風呂とトイレの掃除だけに決めて取りかかり、それが終わる頃には四時半になっていた。
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