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Supermarket
金こそ私の全てなり
金のある人寄っといで
いらっしゃいませ こんにちは
今日も笑顔で金稼ぎ
朝礼で恒例の社訓の読み上げを終えた律子は深く溜息を吐いた。この社訓を読み上げるたび、律子は不快な気分になる。周りの同僚がこの社訓をどう思っているのかはわからない。とにかく社内には、社訓に対して異議を述べてはならないという暗黙の了解がある。
ゴールデンスーパー社長、金賀総は、二十代で起業し、たった五年で三十店舗を展開させたやり手の経営者だ。いや、少なくとも世間一般ではそう思われている。
だが、その実態は、彼が作った社訓が示すとおり、ただの守銭奴に過ぎない。儲けるためならなんだってやる。産地の偽装なんて日常茶飯事だし、何かにつけて社員の給料もカットする。そうやって浮かせた金で、どんどん私腹を肥やしている。そういう汚い男だ。少なくとも、社内には彼をよく言う人間など一人もいない。
律子はいつも早くこんな会社をやめてしまいたいと思っているのだが、かと言って次の就職先があるわけでもなく、結局ずるずると居着いてしまっている。それに、律子はなかなか上手く立ち回っていたこともあって、これまでに給料カットの憂き目にも殆どあっていない。だからこそ、これまで何とかやってこれたし、これからもやっていけるような気がするのだ。
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