どんなに遠く 離れていても / 彗星の奇跡4

1/25
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
いきなり目の前に突き出された籠には、溢れんばかりにぎっしりと野菜が詰め込まれていた。 「…え?…たもつさん?」 三軒隣の住人、滝口 保さんが不機嫌に籠を私に押し付ける。 「お…俺っちでも食いきんねぇからよ…その…あんたんとこで食ゃ良いよ。」 「そんな。食料は一杯保存しておかないと駄目なのよ!?」 …大変なことになるから… 「あぁん!!葉物なんて持ちゃしねえさ!置いといたって腐らせるだけなんだ。」 尚も躊躇っていると、保さんは首に掛けていた手拭いでゴシゴシと顔をこすった。 「…だけどこのことは人に黙っとくんだぞ?…婆さんも!わかってっぺな!?」 「あいよ。すまないねぇたもっちゃん。あんたんちだって大変だろうにさ。」 私の後ろから戸口にやってきたおばあさんが笑顔を向ける。 渡された籠を持って見つめると、彼は怒ったような表情でぷいと顔を背けた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!