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折り曲げた葉を三つ持ちながらの帰り道
特に何も起こることなく街の門へとたどり着くことができた
兵士にギルドカードを見せながらもう片方の手に持っている物体…木の葉イン薬草な訳だが
一応規則だからと中身を確認した後温かい目で街の中へと入る許可をもらった
もうすぐ夕方になりかける時間帯だからなのか少し人通りの少ない中ギルドへと急ぐ
扉をあけて中に行くと依頼が終わったのか装備を着込んだパーティが何組か席で話し合いをしていた
ギルドの受付はいつもの兎耳だった
「依頼の報告に来た」
「はい。薬草採取でしたね。ここに提示をお願いします」
手に持っていた葉ごとカウンターの上に乗せる
一瞬びっくりした様子を見せたが中身を見てすぐに査定に入ったようだ
さすが、と言うべきか
「……確認しました。それぞれ10枚、しっかり揃っています。状態の方も傷もありませんし、劣化もないので高品質のものとして処理させてもらいますね。サファ草だけは他のものよりも見つけにくいものですので、少し高めになります」
ギルド職員がつらつらと言葉を並べていく中聞き覚えのない単語が出てきた
俺は手でストップをする
「サファ草とはなんだ」
「え?……あー、すみません。形だけで名前は言っていませんでしたね。このギザギザで葉の裏が白いものがフレッサ草、黒く細長い葉がサファ草、黄色の葉脈のものがエイク草と言う名前なんです」
確かにあの時は形状しか聞かなかったな
一つ頷いた後ギルド職員にわかったと告げる
草の束を緑色をした布で包んだ後に青い石の嵌った箱に入れて脇へと避けた
その手で小さめの麻袋を渡してきたので受け取る
「上に薬草辞典がありますので気になるときは見てくるのはどうですか?」
それは別にいい、だが…
「あんたは、他の冒険者にもそうやって図書室の利用を促しているのか?」
冒険者の中にはあまり本が好きでないものもいると思う
…俺の偏見か
「誰でもと言うわけではありませんよ。あなたは知識を取り入れるのがお好きなようなので。もう何度も足を運んでいるみたいですしね」
「…そうか」
「そうです。はい、これが報酬になります」
「ありがとう」
「いえ。依頼お疲れ様でした」
見られていたとは……受付にいるのだから見えて当然か
受付を離れてギルドの空いている席へと座る
袋の中から硬貨の擦れる音が聞こえてくるがあまり数はなさそうだ
低ランクの依頼だからこんなものだろう
手の中に開けると大銅貨が一枚と銅貨が六枚出てきた
大銅貨が銅貨十枚分…だったか
全部で銅貨十六枚…多分だが、サファ草が高いと言っていたから八枚分
他は四枚分だろう
屋台で見かけたパンは銅貨三枚だった
それを考えると九枚で三食ギリギリ食える程度…だが成人している人には一つでは足りないだろう
それでも依頼を一つ終えれば一日ギリギリ食えるようにはなる…ということか
(もっとも身の回りの物や住む場所、冒険者の場合武器防具の手入れや買い替えもあるから上のランクの依頼をしなければきつそうではあるな。……そのための支援か)
一ヶ月間の部屋の貸し出しは救済措置
よく考えられている
俺は手に持っていた硬貨を袋に戻すとそれを持ってギルドを出た
(早いうちにポーチなりなんなり買わないとこれを持ち歩くこともできないな。…明日からは依頼をできるだけこなしていこう)
稼いだ金を全てとは言わずとも使わずにとっておけるのは利点だ
自分がなった種族に感謝しなければならないか
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