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危険性の少ない依頼をやりながらギルド職員に勧められるがままに本を読む
たまになかなか来ない俺をシンザやネリス、リベルが捕まえては依頼やら訓練やらに連れ回されたりしていた
お陰で一週間経った今、結構な金が溜まっていたりする
(……全部で大銀貨二枚分、か。積み重なればこれぐらいにはなるのか?)
依頼を受け続けたせいでFランクだった俺のランクもEまで上がっている
ただ、戦闘依頼をこなしていないためDランクへ上げるのはまだとのこと
兎耳のギルド職員によるとDランクに上がるにはこなした依頼の半分以上が戦闘系のものでなければいけないようだ
特例もごく稀にいるがそうそうない
ここ50年で使われていないらしいからもう無いものとして扱ったほうがいいだろう
俺がネリスとリベルに連れられて行った依頼も二人と俺のランクが離れすぎているから俺の方の貢献にはなっていない
高ランクのパーティに寄生して上げるのを防ぐため…だそうだ
その時俺は魔術……もう魔法でいいか
魔法の練習で敵を倒したりしていたため倒した分の分け前はもらっている
ちなみに依頼はレッドボアの討伐というCランクの依頼だった
(考えるとネリスとリベルに会えたことは運がいいことなのかもしれない。二人のランクはBランクだと聞いた。兎耳のギルド職員に高ランクとの縁を作るのは結構難しいと聞く)
安全に魔術の試し打ちができるのはいいが利用しているようにも感じる
やはり、できるだけ一人の方が…成体になるまでは、いいか
宿舎から出てギルドへは行かずにネリスに連れて行ってもらった服屋のある方向へと向かう
宿舎にいつもいる男に聞いたところ、ポーチなどはこの街の道具屋よりはいいものが売っているらしい
他の街ではまた違うらしいが
少し歩くと店が並んでいる通りへと出てくる
色々な木の看板は見ていて楽しい
いや、何度も見ている
少し躊躇いがちに中に入ると水色の長い髪の女がいらっしゃいと言った
彼女は俺の服を嬉々として選んで、髪を切るなと慌てて止めた人である
「今日はどうしたの?坊や。私の着せ替え人ぎょ……いえ、服を買いに来てくれたのかしら?」
危うい言葉が聞こえた気がするが軽くスルーする
「ギルドの人に、ポーチを買うならここでと言われたのだが予算内でいいものはあるだろうか?」
ギルドからもらった麻袋そのままに見せると一つ頷いてから俺の方を見てくる
「十分足りるわ。ポーチね、あるわよ。そうねぇ……あなたもそのうち大人になるんでしょう?残念だけど。なら大人になってからもずっと使えるデザインがいいわよね」
「ああ。できればその方がいい」
「それじゃあこれなんてどうかしら」
一度奥の方へと行って、戻ってきたその手には黒っぽい素材に白い糸で縫われたポーチが持たれていた
「ブラックボアの素材で作られたポーチよ。ここら辺ではあまり見かけない魔物みたいだけれど西の方ではよく見るそうね。だからそこそこ安いわ。代金は大銀貨一枚で十分よ」
「魔物素材を使われているのに一枚でいいのか?俺としては、全部持っていかれても足りないかと思ったんだが…そのブラックボアはCランクの魔物だろう」
ギルドで見た魔物図鑑に載っていた
ボアという魔物は各地に存在していて食用の肉…という意味で狩られるらしい
ただ群れを作るという理由でランクが高くCランク
様々な色を持ち色ごとに属性も変化、その属性を纏っての属性攻撃をするため皮にも耐性がある
そのボアの皮だ、そこそことはいえ安いはずがない…と思うのだが
「ランクなんて関係ないない。私は服屋なのよ?そういうことは防具を扱う人に言ってほしいわ……それに、君が気にいっているのよ?サウザン君」
「つまり、安くするから服はここで買えと」
「そういうこと。私の着せ替え人ぎょ……ゴホン。たまに私の趣味に付き合ってくれるととっっっても嬉しいけれど、私は普段着と一緒に鎧の中に着込むような服も作っているの。せっかくこうやって話すんだから死んでほしくはないわ。余ったお金で安い短剣の一本ぐらい買えるでしょう?」
「そうだが………わかった。ありがたく使わせてもらう」
「素直でよろしい!」
ポーチのつけ方を教わりながらつける
ベルト部分を調整すると大人になってからでも十分に使える
俺は麻袋の中から大銀貨一枚を取り出して渡す
それをにこやかに受け取ったのを見てもう一度頭を下げたあと店を後にした
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