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受付でギルドランクを上げる手続きをしてもらった後に服屋、アモの家、そして赤い牛の看板を掲げている酒場へと足を運んで旅立つ旨を伝えた
服屋は予想通りと言っていいのか…
カリーナは俺の姿を見て発狂しながら服をいくつか押し付けてきた
ちゃんと金は払ったからいいが、あれは恐ろしい
そのあと落ち着かせたところで話をするとカードのようなものが渡された
あくまでようなもの、だ
右上にクローディア服飾店と名前が彫られてある
どういったものか聞くと、カリーナの家は服飾を手がける商家で、この服屋のように様々な国や場所にクローディア服飾店があるらしい
(もし見かけたらこれを見せて買い物してねと言われたが…今着ている服と買った服が駄目にならないと寄らなさそうだ。覚えてたら出すでいいだろう)
アモと酒場の主人にも挨拶をした
酒場の主人には料理を運んで来る際にちらりと言ったらそうか、と言われた
アモはこの街に定住しているわけではないようだから、またどこかで会うだろう
ずっとここにいるわけではないと笑いながら言っていたからな
以前リベルとネリスが止まっていた眠る子羊亭で一日泊まったあと、旅に必要なものを買っていく
高ランクや商人が使っているような空間拡張されたものは無いから買うのは最低限
明かりの魔導具と腕よりも少し短いロングソードを腰にぶら下げて、外套を羽織る
防具をつけるかつけないか迷ったが結局つけていない
代わりに何をどうしたのかわからないが魔物素材を糸にして、それを使った外套を身につけることにした
今着ているこれがそうだ
手持ちがだいぶ軽くなったが構わない
(見た目的には完全に魔術師のそれだな。俺は魔術師ではなく剣の方がメインのつもりだ。…パーティに入る気は無いから別にどう見られようともいいが)
昼前に買い物が終わって門のところへ向かう
兵士にギルドカードを見せると最近よく話す兵士が話しかけてくる
「お、あんた……大きくなったな。今日は依頼か?」
「いや。依頼ではなく旅に出る」
やはり一目でわかるんだろう、成長した姿で俺だと認識している
「そうか…冒険者だもんな。仕方ないか……。またここに帰ってくるんだろ?」
「……。そのつもりではあるがいつになるかわからない」
「じゃあ俺にできるのは笑顔で見送るだけだな。戻って来た時は土産話とか聞かせてくれよな!」
「わかった。…ありがとう、行ってくる」
「無事を祈るよ、いい旅を!」
兵士の言葉に見送られながら街を出る
行き先は俺が生まれた森の方向
地図は持っていない
この世界で地図はたとえ簡略化されたものだとしても持ち運ぶのは禁止されている
でも道は続いている
道の先には…また人の集まる場所があるのだろう
ふと足を止めて後ろを見る
たった一ヶ月ほどしかいないのに随分見慣れた高い壁が…遠くに見えた
俺はこれからあてもなく歩く
でも帰る場所がある…それだけで足が軽くなるような気がした
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