森の薬師と水の花

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「お前は俺とアドルヴァのところを往復する気か」 「ぴろろ〜」 「…何を言っているかさっぱり分からん」 鳥を枝に置いてから木から飛び降りる 軽く膝を曲げながら衝撃を消して着地すると木の枝に置いてきた鳥が俺の肩へと止まった …俺はこいつを連れて旅をしなければいけないのか? まあいい 勝手についてくるだろう それよりも今はアドルヴァの言っていた武器のことだ ギルドの図書室にあった本にも書かれていたが魔族は成体になると自分に合った武器が出せるようになると 一体どういうことだかは分からないが俺も出せるんだろう 魔族だと言っていたし 道を歩きながら体に魔力を巡らせていく もしかしたら魔力が固まったものかもしれないと思ったからだが… (ふつうに動かせるな。俺が小さかった頃よりも自由に動かせるようになっているがそれだけだ。魔力の塊じゃないとすると一体なんなのか) 考えながら進むが一向に答えは出て来ない そういえば…どこかで入れ墨のような場所から物を出すというのがあった もし魔族の武器も決まった特定の場所から出すものだとしたら 眉をひそめながら腕をまくってみてみる 右腕には、ない 左腕には…… 「…これか?」 ちょうど二の腕のところに蔦が絡まるようにぐるりと一周巻かれている 触れても何も起こらなかったので蔦のある場所に魔力が集まるように集中して魔力操作をした もう一度右手で触れると、自分の腕だというのに亜空間の中に手を突っ込んでいるような感触 (気持ち悪いな…自分の体だからなおさら。……これを応用すれば自分の体の中に物を収納することができるかもしれない。いや、やらないぞ。怖すぎる) 言葉で表すのなら体の内側を擽られているような感じだ やられた事はないが想像はできる 目を瞑り手の感触だけで探していると小指の端に硬い何かが当たる感触がした 指で手繰り寄せて一気に引き抜く 「っ!」 黒い煙のようなものを纏った長方形の物体 ゆっくりと物に吸い込まれていって姿がはっきり見えてようやくアドルヴァの言った意味がわかった 出てきたものは、本だった そんなに分厚いわけでもなく手で持てるぐらいのちょうどいい大きさ…表面は紫色をしている 「…はぁ。なるほどな。俺の武器が本だからその中に記憶を移した、と書いてあったのか」 本は武器なのか?という疑問は置いておくことにした 移した記憶は情報としてこの本に書かれているのだろう 本を開いてから1ページ目には何も書かれておらずに2ページ、3ページとめくっていく だが無駄だった 初めだけではなく全て真っ白の無地の紙だったからだ (合言葉のようなものが必要なわけではないだろう。あったとしても俺が知っているはずだ。ならば、知りたいことを考えなければ何も出て来ない…が合っているだろうな) 一体どういったものなのかを知りたいと考えながら再度開くと白いページに文字が浮かび上がってきていた 『この本は記憶の書庫です。今まで会得した知識をこの本に移すことができます。この本を持った時点でこれから経験した知識は自動的に蓄積されていきます。閲覧しますか?』 「…今はやめておこう」 意思を持つ、ではなく俺の意思に反応して読むことができる本 俺が思った通りに文字が消えていき何も書かれていない白いページに戻る これも後で確認だなどど思いながら 夜になる頃、前方に明かりが見えて俺が旅に出て初めての人のいる場所についたのだった
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