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ギルドから出て行く姿を追うように俺も外へ
意外に足が速いな…なんて思っていたら置いていかれそうだ
ギルド職員は薬師の場所を知っているんだろう
一切迷うことなく俺が街に入ってきた門の方へと歩いていったので、後ろをついて行った
が、途中で立ち止まる
目の前にいい年をした女が三人…井戸端会議か
そのうちの一人がギルド職員に気がついて声をかけたようだ
「あらぁ〜また抜け出してきてるの?そのうちギルドの方にこってり怒られちゃうわよ」
「いやいや。うちのギルド長はやっさしいから大丈夫。それに今日はちゃんと大義名分があるからね」
「ほんとうかしら」
「嘘じゃない?この間だってギルドのお使いだとか言って酒場で飲んでこってり絞られてたじゃない」
「あったわねぇ〜!」
「確かにあったけどさ!」
あったのか
街の人にお使いと言いながら酒場に行く辺り確信犯だな
それはサボりというものではないだろうか
「今日はこの人を案内するって役目がある!これで俺は堂々と街を歩けるのさ」
三人に囲まれて口々に言いたい放題言われているのを見ていると急に腕を掴まれた
俺が部外者だと思っていたのだが
まるで俺が物のような扱いをされているのはは気のせいではない気がする
会ったばかりだというのに遠慮というものがないな
引っ張られるがままギルド職員の脇まで移動させられて、三人分の目が俺の方を見た
「っまあ!いい男じゃない!あなた冒険者さん?」
「は?いや、そうだが」
「声も素敵ね!冒険者なんてやめて吟遊詩人でもなんなさいよ〜。せっかくいい声しているんだもの。あなたの歌なら毎日だって聞きたいわ!」
「いいわねぇ!ああ〜私ももう少し若かったらちょっといいかしら?なんて言っちゃいたくなるわ」
「「わかるわ〜」」
ずいっと顔を近づけてくる
思わず顔をそらして隣を睨みつけると笑いながら手で間をあけてくれた
「まあまあ、時間も惜しいし俺そろそろいくわ」
ええーという声を笑顔で手を振りながらようやく進むのを再開したようだ
少しイラっとしたが、そんなに時間を食っていないし別にいい
すれ違いざまに一番遠くにいた女が声をかけてくる
「せっかちねぇ。あんた、宿決まってないのならうちにきなよ?そこのテールって言う店の二階宿屋になってるの。ちょっと若い人が多いから来にくいかもしれないけど待ってるわ」
「……」
「今日のお詫びに安くするから…また話に付き合ってちょうだいな。ここはあまり冒険者が来ないからねぇ。みんな噂話が好きなのよ」
「…わかった」
話にはあまり付き合いたくはないが…別に話すのが嫌いというわけでもないしな
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