森の薬師と水の花

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「いやーごめんな」 呼び止められていた俺のことを待っていたのか、少しした所で立ち止まるギルド職員がいた 「本当に案内してもらっていいのか?色々やらかしているみたいだが」 「大丈夫!多分」 …まあいいか あとでなにを言われようが俺には関係ない 門にいる兵士の横を通り抜けて外へ それ以降なにも言わずに…という事もなく色々と話しかけてくるが適当に返事をした あんた何歳?など別に答えなくてもいいようなことばかりだった事もある だが遠目に見えていた森に近づくに連れて話題はここら辺の地形などのことになっていった 「この街の近くにも森はあるんだけどエジルの森みたいに魔素が溜まることはないんだ。おそらく森に住まう水棲達のせいだとは言われているけどね。真実はわからない」 「すいせい?なんだそれは」 「水に住まう者達のことさ。ええっと?あんた精霊って知ってる?」 精霊…魔物図鑑で見た記憶があるな 魔素があるところに生まれて、魔素を主食として生きる生き物 説明文だけを見るのなら魔素…魔力でできている魔族と同じ様に感じるとは思うが、精霊は魔族と違って実体がない 体の奥に後ろに映る景色が見えるぐらいだと書いてあった 前世の俺の記憶の中では神聖な者だとか、いたずらをする…これは妖精か とにかく悪い様にはなっていなかった気がする ここはどうだかわからないが 「知っている」 「なら説明しやすい。本当は森にも魔素があるはずなんだけど魔物が生まれるぐらいには出ていない。それは水棲達が主食として食べているからだと聞いたよ」 「へぇ……誰に聞いたんだ?」 「これから会いにいく薬師さ。彼女はなんでも知っているんだ!たまにギルドに依頼にくるから家の場所を知っているんだけど」 森に住まう水棲に、森に居を構える薬師か ずっと森に住んでいるのだとしたら確かに森に詳しくなるだろう 森の目の前に辿り着いて中に入ると思ったら森の脇を進み始める (なぜ森の中に行かないんだ?) 疑問に思ったがそれも数分後には消える ギルド職員が辺りを見渡したかと思うと道のない森の中に入っていく …少し進んだところに獣道の様な草の生い茂った道が見えてきた 隠されているのか 「ここ以外に通じる場所ないからね。ここは広いしなかなか出てこれない。説明しただけじゃあこれ見つけられるとも思えなかったからな。案内すると言った俺に感謝してくれよ」 「…先に森に行こうとしなくて正解だった」 「あっはは。実を言うと俺も迷ったくちだからってのもあったりする」 草をかき分けながら進むと道が少しぬかるんできた 足を取られない様にしながら土の中に沈む前にもう一歩を踏み出していく (ここら辺は全て水を含んだ土になっているのだろうか。かなり粘り気のある土だな。気をつけないと足を取られそうだ) さらに進んでいくともっと水が侵食してくるかと思ったがそうではなく普通の土に戻ったようだ やはり歩きやすい 急に空が明るくなり、森が開けた 小さな明かりの差し込む場所には家が一軒立っていた ずっと無言で歩いていたギルド職員が俺の方を見る 「ここが、薬師の家さ」
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