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「いいのか?」
かなり気になるんだがそう簡単について行っていいものでもない気がするのは俺だけだろうか
目の前の老婆は笑みを深くして俺を見てくる
「ああいいよ。あの子たちはあんたの魔力を気にいるだろうしねぇ。少しわけてやれば見せてくれるはずさ。それに…10年に一度咲くと言っても何も一輪だけというわけでもないからね」
「そうなのか」
「水面に花畑のように咲き誇っているよ。ついといで」
杖をつきながら歩き始める老婆の後ろをついていく
今日は人の後ろを歩くことが多いな
わずかに出来ている道の枝を払い、少し水気のある土や木の根に気をつけながら進んでいく
肩に乗っている鳥のことを考えずに避けるだけになってしまったこともあり、今はうまく枝と葉の間を飛んでいるのが見えた
この道は老婆しか使っていないのだろう
俺の背は老婆よりも高いから顔がある場所に枝や蜘蛛の巣が掛かっていて邪魔だった
奥から水が流れる音が聞こえてくると周辺の空気が重くなる
魔素が湧き出ている場所だ
(俺には心地よく感じるが…人間にはどうなんだろうか。多すぎる魔力は人に害を及ぼすと聞いている。魔物も、そのうちの一つだ)
少し先がゆらりとゆれて見える中、川沿いに登っていくと目の前を歩いていた老婆が止まった
目線の先にある低木と低木の隙間から覗き見て、満足げに頷く
「ああ、やっぱり綺麗だ。行ってみてみるといい。きっと驚くだろうさ」
杖で促されながら低木の隙間に身を潜り込ませて通る
最後とばかりに手でかき分けたその先にあったものに目を見開く
「……すごいな」
まだ夜になっていないというのに辺りが薄暗く見えるほどの光を放つ光球がいくつも飛んでいた
川から水が流れてきて出来ている池の上で踊っている
中には光の玉ではなく羽の生えた小さな人がフワフワと飛んでいるのが見えた
……妖精のようだな
水の中からは蓮の葉のようなものがいくつも葉を広げていてその隙間からいくつもの花弁が重なった花
「この森にすむ水棲たちさ。ーーー……」
いつの間にか隣に来ていた老婆が口で何かを唱える
聞いたことのない言葉の羅列
それを聞いていたのか、踊っていた光の玉と水棲達が老婆の元へと集まってきた
(よく見ると光の玉は水棲が光を出しているだけのようだな。近くに寄ってきたからよくわかる)
「ーー、ーーー……。あんたの方にも行ったよ。魔力を分けておやり」
「は?」
老婆が言った途端数個の光の玉が近づいてきた
どうすればいい
とりあえず軽く腕をまくってから目の前に持ってくると光が消えて、羽を羽ばたかせながらふわふわと回り始めた
手に魔力をゆっくりと集めていくと耳に痛くない甲高い音が聞こえてきて楽しそうに笑いあっている
まだ全部は動かせないが手の一部からなら魔力を集めて出すことができるのが良かった
いまだに全部は動かせないが
「やっぱり気に入ったみたいだねぇ……ほら持ってきてくれたよ」
老婆の言葉に前を向くと水棲達が池に生えていた花をいくつか摘み取って俺たちの方に持ってくるのが見えた
「どうやら気に入ったようだね」
「……?ありがとう」
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