森の薬師と水の花

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貰ったポーションを同じようにポーチに入れると先に入れていた瓶がぶつかり合ってガラスの擦れる音が聞こえた 目元にしわを滲ませながら手を振ってくる姿に頭を軽く下げて背を向ける 後ろから聞こえてくる扉の閉まる音を耳にしながら、俺は森の道へと足を踏み入れた (確か、この道を戻るので合っていたと思うが) 薬師の家へと行く時とは方向が違うため、何度も確認をしながら進んで行った だが、確認をしていても心配にはなる 何か木の枝に目印でもつけて行けばよかったかと思っていた矢先に目の前に光の玉が現れた 光の中には羽の生えた半透明の体 …水棲だった 「……?どうしてこんなところにいる。お前たちの住処はあっちだろう」 「ーー……ー。ー……」 くるり、くるりと俺の周りを回りながら歌うように声を響かせる 何を言っているのかはわからないが、伺うように俺の顔を見た後前の道を飛び始める これは…案内してくれているのか? 「ぴろろ〜」 「…付いていくか」 変な場所へは連れていかないだろう 俺の記憶ではこの道であっているようだし しばらく黙って水棲の後をついていくと次第に辺りが暗くなり始めた そういえば…水棲の言葉の意味は水に住まうという意味があったなと思い出す ギルド職員も水棲のことを水に住まう者達と言っていた 目の前の水棲も名前の通り…とまではいかないが水の近くにいからそうなんだろう 水棲がどういう存在なのかはよく知らないが、魔物や俺と同じように魔素溜まりから生まれた生物なのだろうか 「ー…!」 考え事をしながら歩いていたら森の入り口の場所までついていたらしい 光を明滅させながら俺の前まで来て小さく音をこぼすと通ってきた道を戻っていった 外は暗い 今から外の寝床を探すよりも街に戻って空いている宿屋を探す方が懸命かもしれないな ギルドから出た時に話しかけてきた一人が教えてくれたテールという店へといくと夜だというのに明かりがついていた 下がなんの店だかは聞いていないがこの様子を見るに飲食系の店なんだろう 中から漏れ聞こえてくる甲高い笑い声やはしゃぎ声 そっと扉を押して入ると数人の子供が椅子や机の周りを走り回っていて、その様子を眺めるように親子が何組か見守っている 入ってきた俺の方に目を向けてきたがすぐに子供達の方へと戻した 無人のカウンターの方へと向かうと奥の方から見た顔が出てきた 「あら…あらあら!なあに、きてくれたの!もう遅いから来ないと思っていたのに」 「今さっき街についたんだ」 「そうだったのね。…っと、世間話よりも疲れたでしょうから話を進めるわね。今日は泊まりでいいのかしら?」 「ああ。一日で頼む」 「大丈夫よ。ちゃんと部屋も空いているわ。食事付きで銀貨三枚、無しなら二枚よ」 「無しで」 ポーチから麻袋を取り出して銀貨を二枚取り出して渡す 「…はい、確認したわ。これが鍵よ。二階に上がって右側の一番手前の部屋ね」 「俺にここを教えた時に若い子が集まるから…と言っていたが、それは子供のことか?」 「んー?ああ、そういえば言ったわね。冒険者の人達の中にはあまり子供が好かないような方もいるし、傷とか雰囲気とかを見て子供達が怯えてしまうこともあるの。私の宿では子供連れの長期の旅人が多く泊まるのよ」 「下手な騒ぎを起こされたくないのか」 「どこの宿屋だってそうよ。でもあなたはそうじゃないと思ったから」 商売人の感は大事なもの 目の前の女もそれを信じたんだろう まあ、別に子供がいたからどうするという者でもないし少し煩いと思う程度だ 子供に捕まるのも面倒なのでさっさと二階に行こう 「どうぞごゆっくり」
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