サウザン

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「また貴方は死んだんですか」 「はぁ、はい」 ……また? 見覚えのない白い壁に囲まれた部屋に、男と二人向かい合って話していた 応接室のように整えられた調度品は品が良く、周りにあるまとめられた紙の束はつい先ほどまで男の前にあったもの 切れ長の目をこちらに向けた男は、長い前髪で隠されている俺の顔を見ているようだった 「覚えていないのですか?」 金から赤へと変わっている髪は黒い紐で縛られていて、肩から下へ流れている 整った顔の下にある服はデスクワークには似合わないような白い法衣を着ている 覚えていないって……何を? 頭に引っかかる そういえば、ここはとても懐かしい様な…そんな感じがする まるでなんども来たことがあるみたいな…… 「あ」 思い出した 思い出してしまった 俺は、もう何回も死んではここへと戻ってきていた 目の前にいる男は死ぬたびに俺の前にいる 確か…名前は 「アドルヴァ」 「…その顔は覚えている様ですね」 そう、覚えている なんで今まで忘れていたのかわからない量の記憶が頭の中を巡っていく 一体俺は何度死んだ? 何度生を受けた? 疑問は浮かんでは消えて、一瞬で自分が誰だかわからなくなりそうだった そんな俺を見てなのか、アドルヴァは口を動かしていく 「何を見失っているのです。貴方は貴方です。違うのですか?」 「…いや、そうだ。俺は俺だ」 頭を軽く振って一度深呼吸する 最後に死んだ自分が、今の俺だ アドルヴァはなにかを書いていた手を止めて、持っていた羽ペンを置いた 「貴方が死ぬのはこれで九百九十九回目…混乱するのも無理はないです」 「そんなに」 「本来ならば死んだ魂は記憶も洗い流されて次の生へと廻っていくのですが…貴方は何度死んで生を受けても、記憶は洗い流れずに魂に蓄積され続けていました。なので、毎回ここへと呼んでいたのです」 「だから、ここに見覚えがあったのか」 「はい」 俺自身は知らなくても、かつての俺はこの場所に来ていた 魂がこの場所を覚えていたから懐かしいと思ってしまった 昔の記憶なんてもう朧げにしか覚えていないのに魂は覚えているんだな 鋭い金色を見返す 「じゃあ、また俺は生まれ変わるのか?」 「そうなります。ですが……」 言葉が淀む アドルヴァの目は俺のちょうど心臓のある位置、多分魂があるであろう場所を見ていた 「貴方の魂はもうあちこちが壊れかけています。貴方が記憶をすぐに思い出せなかったのも、そのせいでしょう」 「…何が言いたいんだ」 「次の生で……貴方の魂は役目を終えます。…最後の転生になるでしょう」
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