雨は必ず上がるから

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「そんな顔で見ないでよ…!!汚いわねっ」 母親の怒号が、部屋中に響き渡る。 あぁ…またこの夢か。 幼かった頃の「俺」の思い出だ。 もう何日もお風呂に入ってない、 小さな俺の身体は確かに異臭がしたと思う。 明け方に帰ってきて、最低限の水と食べ物を置いて直ぐに出て行く そんな生活を1年くらい続けた頃だろうか… 珍しくその日母親は家を出て行く前に 「俺」の顔を見返すと、 「そんな顔で見ないでよ…!!汚いわねっ」 と吐き捨てるように言った。 「その顔、ただでさえあの人とソックリで反吐が出るのよ!!見ないでよ!!」と吐き捨て部屋の扉を閉めた。 母親は、女を外につくって出て行った俺の親父と瓜二つの俺を忌み嫌っていた。 それから丸2日母親は帰って来なかった。 「行こっか。」 そう声を掛けられたのは、 ちょうどその頃のことだ。 公営団地前の公園の砂場で、たまたま遊んでいたら声を掛けられた。 その子は俺と同い年くらいのおさげ頭の子でピンクの可愛い服を着ていた。 周りは年寄りばかりが住んでいて、自分と同じくらいの子と会うのは殆ど初めてだった。 「…どこへ行くの?」 そう恐るおそる聞いてみると、 その子はニコッと笑って俺の頭をクシャっとしながら、「楽しいところだよ」と言った。 それが美羽(みわ)との初めての出会いだった。 美羽…俺はお前が必要なんだ… 「…く、(たすく)!!」 遠くから呼ばれた気がして、目覚めるとそこには美羽がいた。 「大丈夫?すごいうなされてたよ?」 心配そうに俺をみてきていた。 夢か…確かに全身汗でびっしょりだ。 「お母さんに聞いたんだけどね、わたし達3日も寝込んでたんだって。雨に打たれちゃったせいかな?このままだと、また風邪ひいちゃうからお風呂入ってきなよ」 そう言ってふかふかのバスタオルを渡してくれた。 「美羽(みわ)ー…俺…」 「ナスカのことなら誰にも言わないから大丈夫だよ。わたし達には共通の生い立ちがあるし、きっと思ってることは同じだから…」 そう言って静かに扉を閉めた。 シャワーを借りさっぱりした俺は、 改めてなぜ美羽が俺の正体について言及してこないのか考えた。 きっと美羽の中で何か腑に落ちたのだろうと思った。 あれそれじゃあ美羽も、もしかして…? 「佑、シャワー浴びてきた? あのね、わたし佑のおかげでひとつ夢が出来たよ。わたし…佑と一緒にまたピアノ弾きたい」
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