再会

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中に入ると、小洒落た今までには 見たことのないような調度品が置かれていた。 私が初めて通された部屋は 革張りの椅子やソファが並べられている 応接室のようなところだった。 床にはフカフカのペルシャ絨毯が引かれ、 周りには木製の本棚が立ち並び、 難しそうな本がたくさん並べられていた。 実の母親は 「お兄さん、元気…?」と尋ねた。 叔母は、私たちに温かな紅茶とクッキーを用意しながら 「えぇ、元気よ。今は海外に論文の発表しに行ってるわ」 と言った。 論文? 海外? 今まで聞いたことのないような言葉ばかり並んでいた。 「そう、元気なのね、 良かった…」 なぜか母親はホッと胸を撫で下ろしたように 見えた。 「ところで、今まで何やってたの? 母さんと父さんも、とてもあなたの事心配してたのよ」 叔母さんは真剣な表情で母親を見つめた。 「…私のことはどうでもいいじゃない。 …優秀な姉さんには、分からないことよ。」 叔母はその様子をみて、軽くため息をついた。 「まぁいいわ… で、今回はどうしたの?」 「…暫くこの子を預かってほしいの。」 叔母は驚くように母親と私をみた。 「正直、すごく虫のいい話だということは分かってる。 だけど、今の環境にこの子を置いておけない。私…妊娠してるの」 と母親は言った。 「ちょっと待って?その子は、あなたの子なのよね? なのに、なぜ手離そうとするの?」 叔母はとても、困惑した様子だった。 当たり前だろう、久しぶりにあった妹が 突然そんなことを言うのだから。 そこからの事はあまり覚えていない。 詳しくどうやって叔母の家に渡ることになったのか…は。 ただ、母親が私の腕のえぐれた痣を見せて お願いをしたのだけは覚えている。 それから暫くして、私はあのうちの子になった。
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