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不思議なことに僕は、新しい人生の封筒を開けた人間に関する記憶は消えなかった。だからこそ、人の人生が一転するのを見て楽しめたのだけれど…。 そしてその人生の見え方は、毎回一定ではなかった。 『逃亡者』となった本町の時は、既に逃亡して一年が経ってからの姿だった。そして『総理大臣』となった林は、総理大臣となって2期目という姿だった。 本町の時と同じように、僕のスマホの電話帳から名前は消えていて、共通の友人達からも記憶は消えていた。驚いた事に林は、生まれた時からの経歴も変わっていた。 なるほど、新しい人生は一から始まるのか。だから元の自分の存在が消えるのか。 現在の林は『総理大臣』として成功していた。支持率も常に90%近くを保ち、売りにしている国民目線の政策が、その支持率を支えていた。 つまり林は、金で新しい人生を買い、見事に成功したという事だ。 しかし、もっと値段の高い『総理大臣』の封筒もあったということは、今は成功していても、何か転落するような出来事も起こるのかもしれない。 この先の林の人生も気になるけれども、やはりもっと、新しい人生を買った人間がどうなるのかを見てみたい… そんな欲求に取り憑かれた僕は、スマホの電話帳に入っている友人、知人達に次々と新しい人生を買わせていった。
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