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僕は本町と共通の友人にも、片っ端から電話を掛けたが、皆口を揃えて『本町 慎也』なんて人は知らない、知ってはいるが、それは逃亡中の容疑者の名だと。 どういうことだ? 何故、僕だけに記憶が残っている? 人生を買い、あの封筒を開けると、封筒に書かれた人生が始まるのは分かった。そして、今までの人生が全てリセットされるだろう事、元の自分の存在が、記憶が、全て消去される事も、なんとなく分かった。 だけど、それだと僕の記憶にだけ残っているのは何故なのか… 気にはなるが… 今はそれよりも… 金で人生が変えられてしまうことの方が、興味を惹かれた。 自分の人生は特に変えたくはないけれど、自分の身近な人間の、人生が一転する姿を見るのが、興味深く面白い。それは多分、僕とあの店の男にしか見えていない。そこがまた良い。 そうだ もっとあの店の存在を広めよう。 このスマホの電話帳の中から、一人ずつ選んで呼び出して、あの店で人生を買わせるんだ。 金が足りない時は僕が出してやればいい。 ああ、そう言えば いつも『俺が総理大臣だったら…』なんて言ってる奴がいたっけ。 そうだな、次はあいつに是非、総理大臣になってもらおう。あいつがこの国のトップになって、この国がどう転ぶか…それを見るのもまた楽しそうだし。 僕は近くの建物の壁に寄り掛かり、スマホの電話帳を再び開いた。画面をスクロールさせて、お目当ての名前の所で指を止めた。 さあ、次なる新しい人生の幕が上がる。
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