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 僕たちは年齢こそ離れてるけれど、好きなこととか、ふと感じることとかがすごく似ていて、だから僕は先生のことが好きなのだと思う。僕たちのまわりには同じ空気が漂っていて、それがとても心地良くて、安心できるのだ。  先生は、僕のことを、どう思っているのだろう。  不思議なことに、僕はこれまで一度もそんなことを考えたことがなかった。  高校生の頃から先生に憧れて、先生に会いたいがために同じ大学に入って、一目で恋をして、それからずっと先生に夢中だった。  先生のことが好きで大好きで、いつも頭の中は先生のことでいっぱいで。少しでもいい所を見てもらいたくて、一生懸命勉強した。そうして一方的に先生への想いを募らせてきたのだ。  先生は、とても優しい。こうやって、僕の脚を揉んでくれるくらいに。僕が困っていていたら、駆けつけてくれるくらいに。でもそれは、先生が元々優しい人だからだと思う。  それでも、一緒に葵のお世話をして、二人きりの時間を過ごして、先生はほんの少しでも、僕のことを意識してくれているのだろうか。僕が先生のことを好きだというのは、いくら鈍い先生だって気づいているはずだ。もし、先生が、僕のことを好きになってくれていたら……。  そんなことを考え出したら、突然脚に触れる先生が気になり始めた。一度意識してしまえば、触れる手の感触が脚から身体の中心に伝い、そのさざ波のよなあまい痺れにぞくりと身体を震わせる。 「先生ありがとう。もう大丈夫」  慌てて身体を起こした。僕が急に起き上がったので、先生はちょっと驚いた顔をしている。 「あ、すごく気持よかった」  取り繕うような言葉に、先生の顔が一瞬曇ったから、ますます僕は焦ってしまった。 「あの、だから、これ以上触られたら、ヤバい」  口に出してはいけない言葉だったが、もう遅い。自分の馬鹿さに呆れて、大きなため息が零れた。 「……ごめん」  そう呟いて、また恥ずかしそうに、先生が俯く。上気した頬の色や、伏せた目の睫毛の影が、とてもきれいで、近くで感じたくて、触れたくて、ゆっくりと顔を近づけた。  目を閉じる。鼻先がぶつかる。やわらかなくちびるに、一瞬だけ触れる。先生の身体が震えた。 「……僕こそ、ごめんなさい」  先生の肩に両腕を伸ばして、ぎゅっと抱きしめた。あたたかく、細い先生の身体。懐かしいような、泣きたくなるようないい匂いがする。僕は先生を抱きしめたまま、先生は僕に抱きしめられたまま、お互いに一言も発することなく、ただずっとそのままだった。
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