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一旦先生のマンションに戻って、また後で言いながらいちゃいちゃして、自宅に帰ったのは十一時過ぎだった。昨夜、先生を送ってくると家を出てそのままだから、なんとなくこっそりと入ったけれど、早速廊下で二人に捕まってしまう。
「諒のくせに朝帰り、いや昼帰りなんてねえ」
「こんなに小さかった頃から知ってるのに、すっかり大人になっちゃって」
二人がわざとらしく溜息をつきながら話している。そしてなぜかまた新さんに背後から抱きしめられ、頭を撫でられていた。
「おいしいパン買ってきたけど、食べる?」
「食べる食べる」
「じゃあ僕、コーヒー淹れてくるよ」
逃げるようにその場を去った。二人とも、先生のことを敢えて口に出さないから、余計にタチが悪い。
パンはいろんな種類を買ってきたので、昼食として食べることにした。キッチンでポテトサラダとハム、チーズ、それからスープを用意して、バゲットやカンパーニュを切って、簡単なサンドイッチを作る。クロワッサンやディニッシュはそのまま大きなお皿にのせてテーブルの上に置いた。
「ホントだ。おいしい、このパン」
三人でもりもり食べて、結局買ってきたパンは全部食べきった。満腹のお腹をさすりながら、思い思いにごろ寝する。葵は僕が帰ってからずっと眠っていて、とても穏やかなひとときだ。いかにも休日の家族って感じが、変に心地良い。
きっと僕が子ども、あるいはもっと小さな赤ん坊だった頃も、こうやって一つの部屋に集まって、家族みんなでごろごろしてたんだろうな。
そんな光景が脳裏に浮かんで、懐かしいような、甘酸っぱい気持ちに包まれた。
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