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 夕方から新さんと一緒に晩ご飯の支度をした。  新さんが現地のスーパーで買ってきてくれたたくさんの調味料や乾麺などを使って、ふたりで料理を作っていく。ナシゴレンとミーゴレン、チキンカレー、春巻き、そして春雨のサラダ。料理している間にも、ハーブやスパイスのおいしそうな香りが漂ってきて、出来上がったそばから味見して「おいしい!」と叫ぶ僕を、新さんがにこにこしながら眺めていた。  ちょうどすべての料理が出来上がった頃に、先生がやって来た。僕が玄関まで迎えに出ると、食後のデザートにとアイスクリームを渡される。早速テーブルに着いて、食事会だ。 「おいしい!」 「でしょ? 辛さ控えめにして、食べやすくしてみたんだ」  ブラチャンやナンプラーの独特な匂いに食欲が倍増しになって、僕もみんなももりもりと食べた。特に気に入ったのはチキンカレーで、口の中でほろほろと崩れるチキンのやわらかさと、ココナッツミルクの甘い香りとまろやかな味わいがたまらなくおいしい。 「いいなあ。食べ物もきっとすごくおいしいんだろうな。僕もマレーシアに行ってみたい」  カレーを頬張りながら思わず呟いたら、 「おいでよ。おいしいものは安くてたくさん食べられるし、自然がいっぱいだし、楽園みたいなところだよ」 と、嬉々とした表情でそう言ってくれた。 「うん。今度先生と一緒に行こうって話してたんだ。ね、先生」 「……なんかすげえ複雑。可愛い弟を横取りされた気分」  新さんがぼそりとつぶやいた言葉に、今度は姉がきっと新さんを睨み付けた。 「それおかしいでしょ? 普通はお兄さんを取られたって、諒に嫉妬するところじゃない?」 「だってさあ、俺、諒くんのこと小学生の頃から知ってて、めちゃくちゃ可愛くてずっと大切にしてきたのに、よりにもよって自分の兄貴と付き合うことになるなんて」 「そんなに可愛い可愛いって言うなら諒と付き合えば良かったじゃん!」  会話の雲行きが怪しくなってきたので、僕と先生は食べることに集中することにした。口喧嘩が急速にヒートアップしていくふたりをよそに、僕たちは「おいしいねえ、マレーシア行こうね」と言いながら、新さんのすばらしい料理を堪能した。
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