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 本当は家族三人が一緒に暮らせることを、喜んであげなければいけないのに。誰よりも葵と一緒に暮らしたいのは、新さんなのに。自分が口に出してしまったことが、あまりにも子供じみていて、恥ずかしかった。 「……ごめん、新さん」  おそらく真っ赤に充血してしまった目で新さんを見つめながら、精一杯の気持ちを込めて謝った。 「本当に可愛いな、諒くんは」  葵を抱っこしたまま新さんが僕に近づいてきて、「はい」と葵を差し出された。あまい匂いを発散させている葵を、僕は抱っこした。ずっしりと重くて、あたたかい。 「俺たちと一緒にマレーシアで暮らそうよ」  笑いながら新さんが言ったら、先生が「それはダメ」とすかさず言い返す。それで僕はすこし笑った。 「諒」  姉が僕を呼ぶ。振り返ると、姉はやさしく微笑んでいた。 「そんなに悲しまないで。まだ一年も先の話だよ。それから、もし二人目ができたらこっちで里帰り出産するからね。そしたらまたしばらくはお世話になるよ。いつでも遊びに来てよ。葵も私も待ってる」  僕は頷く。 「諒の気持ち、私は分かるよ。うちはずっと引き算の家だった。父さんが死んで、母さんが死んで、二人ぼっちになって。だから新くんと結婚して、葵が生まれて。そうやって家族が増えていくことが、すごく嬉しかったんだよね」 「うん。嬉しかったよ。兄さんができて、葵が生まれて。先生と一緒に面倒見て。家がどんどん賑やかになって。こうやってみんなでお喋りしながら食事したりするのが、僕にとってはすごく楽しくてしあわせなことなんだ」 「離れて暮らしても、そんな時間を作ろうよ。みんなで集まって、食べて飲んで遊んで。ワイワイと楽しく過ごす時間」 「……それ、いいね」
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