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……あれから何分経っただろうか。
煙草は全て吸い尽くした。
微動だにしない車中で、ラジオの声が唯一の救いだった。
渋滞は、まだ続くようだ。
男は疲れ切っていた。
気付いたら、前方の車の後ろ、つまり男の目の前に白い笑顔が移動していたのだ。
先ほどまで隣にあった傷ついた新車種も無くなっていた。
その代わり目の前の車が廃車のように変わっていた。
怖い、寒い、気持ち悪い。
嗚咽を繰り返しながら、男はなぜか顔から眼を逸らせなかった。
見なくてはいけない理由なんて無いはずなのに。
男の頭の中は、無事に帰れることだけを考えていた。
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