逆数え

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 そういえば――どうしてここは草ボーボーのままなのだろう。捜索をしたなら、刈られたり、踏み荒らされたりするはずだ。 (もしかして、神社(ここ)は探してないとか……)  まさか。ぼくは、親やお巡りさんに、コウちゃんがこの神社いなくなったのだとちゃんと伝えたのだ。  それとも――大人たちは、あえて探さなかったのだろうか。  神社(ここ)侵入(はい)ってしまったら、大人たちでさえいなくなっちゃうかもしれないから。 (そ……そんなことあるわけない。大人がそんなことするわけない) 「八十一、八十、七十九――」  自然と数えるのも早くなる。  蒸し暑くて汗がしとどに滴っているのに、寒気で震えがとまらなかった。  呼吸がしにくい。風でも吹けば少しは違うのに――。  その時、はたと気づいた。無風であるのに、なぜ紙垂(しで)は揺れていたのだろうか。あの場所だけ一時(いっとき)、風が吹き抜けていたのだろうか。  そもそも紙垂はばらばらに蠢いていた。そう、まるでそれぞれ独立して手招いているかのように。 (風じゃ、あんなふうには動かない)
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