10人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
そういえば――どうしてここは草ボーボーのままなのだろう。捜索をしたなら、刈られたり、踏み荒らされたりするはずだ。
(もしかして、神社は探してないとか……)
まさか。ぼくは、親やお巡りさんに、コウちゃんがこの神社いなくなったのだとちゃんと伝えたのだ。
それとも――大人たちは、あえて探さなかったのだろうか。
神社に侵入ってしまったら、大人たちでさえいなくなっちゃうかもしれないから。
(そ……そんなことあるわけない。大人がそんなことするわけない)
「八十一、八十、七十九――」
自然と数えるのも早くなる。
蒸し暑くて汗がしとどに滴っているのに、寒気で震えがとまらなかった。
呼吸がしにくい。風でも吹けば少しは違うのに――。
その時、はたと気づいた。無風であるのに、なぜ紙垂は揺れていたのだろうか。あの場所だけ一時、風が吹き抜けていたのだろうか。
そもそも紙垂はばらばらに蠢いていた。そう、まるでそれぞれ独立して手招いているかのように。
(風じゃ、あんなふうには動かない)
最初のコメントを投稿しよう!