学園生活

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「あの、私、後ろの席のアンヌ。これからよろしくね」 急に後ろから声をかけられて慌てて振り返ると、赤毛の平民ぽい女の子が笑っていた。 「私はメアリ。よろしくね、アンヌ」 「変なこと聞くけど、メアリは貴族?」 「一応貴族だけど、両親が趣味で民衆食堂をやっていたから、平民みたいなものかな。アンヌは?」 「私は平民。奨学金で通うの」 「私も奨学金。一緒だね」 その時、隣の列の机に座っていた男子が、ハンッと鼻で笑った。 「奨学金受けないと入園もできないような貧しい奴らが隣かよ」 「あなた、失礼な方ね。奨学金を受けられるのは成績が優秀な証よ。 それに、貧しいから奨学金を受けるとは限らないわよ。 私は、自分の夢を叶えるのに親の財布に頼りたくなかったから、奨学金を受けることにしたんだし。 あなたみたいに平民を馬鹿にするような方が、よくSクラスに入れたわね」 メアリに言われて、その男子は怒りで顔を真っ赤にした。 「生意気なっ!」 「やめておけ。入園早々問題を起こすな」 メアリを叩こうと手を上げたその男子を止めたのは、静かな男子の声だった。 入園式で、メアリの代わりに入園の挨拶をした子だ。 気づかなかったが、メアリの前の席に座っていた。 「レミ公爵家の、イワン様……」 さっきまで怒っていた男子が顔を青くする。 公爵家ということは、かなり高位の貴族の子供だ。 そんな家のご子息でも医術を志すのか。 「サンダー子爵家のダノン君だよね。女の子に手を上げるなんて、貴族としては落第じゃないの?」 イワンの言葉に、ダノンと呼ばれた男子はグッと詰まった。 「僕はイワン・レミ。よろしくね」 「私はメアリ。この子はアンヌ。私もさっき会ったばかりだけど」 「アンヌです。よろしくお願いします……」 公爵家のご子息だと聞いたからか、少し緊張しているみたいだ。 「身分なんて気にしないで、仲良くしようね。 それにしても、メアリは気が強いね」 「母からも注意されるんだけど、なかなか直らなくて」 「いいんじゃない?大人しいだけの貴族の令嬢じゃ、医師はつとまらないだろうし」 「そんなこと言われたの初めて。ありがとう」 「どういたしまして」 イワンは優しげにクスッと笑った。 友達、二人ゲット! メアリは内心ガッツポーズをした。
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