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そんな楽しい毎日を過ごしていたある日、急に国王が視察に来ることが決まった。
まだ、今は母さんには似てないと思うけど、もしも気づかれたら……
メアリは真っ青になり、入学して初めて早退した。
担任は、翌日には国王陛下の視察があるから出来れば登校してほしいが、無理はしなくていいと言ってくれたので、ありがたく休ませてもらうことにした。
「メアリ。アンヌだけど、調子はどう?」
「アンヌ?ちょっと待って、今開けるから」
休んだ日、放課後にアンヌが部屋を訪ねて来てくれた。
「よかった。昨日よりは顔色がいいね」
「うん。心配かけてごめんね」
「国王陛下も、メアリに会いたがってたよ」
「え………」
メアリは固まった。
なぜ。
「メアリはすごく成績がいいから、将来王室侍医のグループに入らないかって」
ああ、そういうことか。
「イワンとアンヌも言われたんでしょう?」
「うん。イワンは断ってたけどね」
「そうなの?」
「イワンは僻地医療を目指しているからって」
「私と一緒だ……」
「そうなの?メアリとイワンは気が合うね。将来は二人で僻地医療に携わったら?」
ニヤニヤするアンヌの頭を、メアリは軽く叩いた。
「すぐそうやってからかうんだから」
「だって、面白いじゃない。人の恋の話って」
「私とイワンはそんな関係にはならないよ」
「今はそうかもしれないけど、学園生活はまだ始まったばかりだし、これからどうなるか分からないよね」
目をキラキラさせるアンヌに、メアリは苦笑した。
本当の身分を隠して、過去についても隠して。
そんな関係なのに恋愛なんてできるわけ無い。
メアリはため息をついた。
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