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両親がそんなにも引っ越しを繰り返していた理由を知ったのは、6歳の時。
父は突然警備隊に捕まり、母は私を連れて、荷物も持たずに山の中へ必死に逃げた。
山の中の洞窟に身を隠して、あたりに生えている草や、木の実で飢えを凌いだ。
でも、元々体が丈夫でなかった母は、日に日に衰弱していって、とうとう寝込んでしまった。
そして、聞かされた。
母は元々王家の姫君で、騎士団の団長だった父と恋に落ちた。
当然、二人の恋は許されるわけがなく、無理矢理政略結婚を迫られた夜に、二人で駆け落ちしたのだと。
それからは、警備隊や騎士団に見つかりそうになるたびに引っ越しを繰り返していた。
「あなたの顔は知られていない。
このまま私を置いて一人で逃げなさい。そして、ここに書いてある人を訪ねるの。手紙を持たせるから、その人に会ったら渡しなさい。
私の唯一の親友です。きっと、あなたのことも助けてくれるはず」
「お母さんを置いていくなんて嫌だよ!」
「エミリー。あなたは私とお父さんの子。強く優しい子。
あなたは、自分の生きたい人生を歩いて。私はもう、ここから動けないの。
わかるでしょう?」
母の言いたいことは分かっていた。
母がもう、身体を起こすことも出来ないということも。
「エミリー。お父さんと結婚して、あなたが生まれて、私は本当に幸せだったわ。ありがとう。
目的地にたどり着くまでは、男の子の格好をしなさい。
あなた位の女の子は、人攫い攫われたり、もしかしたら私達に娘がいたと警備隊に知られているかもしれないから」
母の声はか細くて、今にも命の火が消えそうだった。
「自分の道を進みなさい。何があっても泣いてはだめ。強くなりなさい。
そして、自分の夢を自分の手で掴みとるのよ」
「はい………お母さん」
涙をこらえて答えると、母は安心したように微笑んで、ひっそりと息を引き取った。
私は木の枝で土を掘り返して、母を埋葬すると、母の形見の短刀で髪を短く切り、山を降りた。
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