記憶の中の家族

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男性が奥に引っ込んだのを見て、メアリーはいつでも逃げられる態勢を取った。 ジュリアーノさんを呼ぶふりをして、警備隊や騎士団の人を呼ぶかもしれないからだ。 しかし、奥から出てきたのは、母と同じ歳くらいの綺麗な女性だった。 「私に手紙ですって?どなたからかしら」 「読んでいただければわかります」 ジュリアーノは母からの手紙を受け取った瞬間、顔を強張らせた。 震える手で手紙の封を破ると、慌てたように手紙を読み始めた。 そして、みるみるうちに綺麗なグリーンの瞳に涙をため、嗚咽をもらした。 「姫様……」 一言ぽそり、と呟くと、メアリーを見た。 「あなたがメアリーね」 「はい」 「姫様は……お母様は亡くなったの?」 「父も母も、同じ日に他界しました」 「そんなところまで仲がいいんだから……それにしても、お母様に随分しっかりと教育されたのね。まだ6歳でしょう?その割には話し方がしっかりしているわ」 「ありがとうございます」 「メアリー。あなたは今日から私の子よ。私はね、あなたのお母様の幼いときからの侍女だったの。団長と逃げる時には協力もしたわ。姫様の忘れ形見ですもの。大切に育てさせてもらうわ」 「あの、母の手紙にはなんて?」 「あなたが自分の夢を叶えるまで、身分を隠す手伝いと、そばで世話をしてほしい、と」 母は、いつの間にそんな手紙をしたためていたのだろう。 もしかしたら、いざというときの為に随分前から用意していたのかもしれない。 「ありがとうございます。ですが、ご主人に反対されないでしょうか」 「ああ、マークのこと? あの人なら大丈夫よ。深く詮索してくる人でもないし、うちは子供がいないから、きっと喜ぶわ」 そう言って奥へ行くと、マークを連れて戻ってきた。 「この子は私の親友の子でね。先月ご両親を亡くしたのだけど、身寄りがないのよ。だから、うちの子としてそだてたいんだけど、いいかしら」 「そんなことがあったのか。大変だったな。うちの子になってくれるのは大歓迎だよ」 「ありがとうございます」 久しぶりに優しさに触れて涙が出そうになったが、メアリーはグッと堪えた。
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