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呪いの部屋の前の廊下で、貴弘は、のどかと八神が話しているのを聞いていた。
「すみません。
結局、ご迷惑おかけてしてしまって」
「まあ、隣に仕事が見つからなくて、今にも首くくりそうな奴がいるよりはいい。
つながってる家に住んでるのに、そういうの見過ごすのは職務怠慢な感じがするだろ」
いや、人が投げ込まれるのはいいのか……、と思いながら、貴弘は、
「本当にそちらの部屋を一部、間借りするのなら、家賃を下げよう」
と八神に言った。
「そっちの一万の家賃を俺も含めて三人で割るか」
と言うと、
「三千円か」
と八神が呟く。
……もはや、もらわなくてもいい気がしてきたぞ、と貴弘は思った。
万が一、此処が本当に社員寮になって、何人か引っ越してきて、また割ったら、家賃は小学生の小遣い程度になるだろう。
「じゃあ、保健所の検査が近くなったら、そんな感じでお願いします。
……でも、やっぱり申し訳ないですね」
と言うのどかに、八神は、
「いや、こっちの方が申し訳ない感じがするぞ。
家賃は三千円になるし、食事も安く作ってもらえるし。
朝食作ってもらえるっていいよな。
まるで奥さん居るみたいでさ」
と言って笑う。
その言葉に、貴弘は、聞いていた耳をぴくりと動かした。
八神はなにも思っていないようなのだが、こちらは気になる。
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