好きだと言ってから考えよう

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   今日は出社しなくてもいいんだけど。  ちょっと覗いてみようかな。  会社に居るのもあとちょっとだし。  そんな感傷的な気持ちもあって、ひょい、と10時ごろ、のどかは職場を訪ねてみたのだが……。 「胡桃沢さんっ、ナイスッ」 「いや~、今、来るとは、空気読んでるねっ」 とおじさんたちがワラワラ寄ってきて、気がついたら、真剣に仕事をさせられていた。 「胡桃沢、いやー、久しぶり」 「のどか、これ、お餞別がわりに」 と言っては、みんなも、のどかのデスクに、軽い仕事を置いていく。  ふと気づけば、隣の課の課長もデスクの真横に立っていた。 「……なんですか?」 とあまり仲のよくないその課長、早蕨(さわらび)を見上げると、 「いや、お前を叱れるのも、あと少しなんで、なにか叱りたいんだが。  最近、会社に来ないから叱る内容がないなと思って」 と言い出す。  いや、無理やり叱らなくても……。  そして、仕事内容が連携しているので、一緒に仕事することが多いせいか、お忘れのようなんですが、私、実は、隣りの課の人間なんですよね……、 とほのぼのとした感じの名前なのに、ちっとも、ほのぼのしていない早蕨を見上げていた。
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