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あれから何百年も経ったのだろうか……。
そんなことを思いながら、貴弘は、あのあばら屋敷の前に立っていた。
自分が居ない数日の間に、すっかり様変わりした家を見て、あれから長い年月が流れたのかも、と不安を抱いたのだ。
今、中から、のどかが出てきても、霊かもしれん。
『貴方のお帰りをずっとお待ちしてましたのに……』
……とは霊になっても言いそうにはないが、と思ったとき、家の中からのどかと泰親猫が飛び出してきた。
「社長っ、お帰りなさいっ」
とのどかは、なんとなくだろうが、抱きつきそうになって、あわわわ、という感じに逃げていた。
泰親の方は迷うことなく飛びついてきて、足に爪を立てながら落ちていく。
いたたた……と顔をしかめながらも、貴弘がふかふかの泰親を抱き上げると、泰親は頬に頭をすりつけてきた。
……何故か、泰親が俺に懐いている。
そして、のどかもいつもより、懐いている。
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