3797人が本棚に入れています
本棚に追加
/430ページ
「あのっ、この間、連休前に届けを出したものなんですけどっ」
と令和婚姻届け受付こっちです、みたいな立て看板を抱えて退けようとしているショートカットの女性に、のどかは慌てて話しかける。
すると、その女性職員は振り返り、
「ああ、そうなんですか。
おめでとうございますっ。
いいですよ、連休前の方でも」
と微笑み言ってきた。
は?
「ささ、そこに二人で並んで」
と白い壁に薔薇でハートが作られた壁の前に立たされ、令和のパネルを持たされる。
「はいっ、笑ってくださいねーっ」
とその職員にインスタントカメラを手に言われ、こんなとき、つい流れでゆるーく合わせてしまいがちな日本人の特性をばっちり持ったのどかは、ばっちり笑い。
貴弘は笑ってはいなかったが、パネルは一緒に持っていた。
「あ、スマホでもお撮りしましょうか」
と机を片付けていた感じのいい男性職員にも言われ、流れで渡す。
「はいっ。
おめでとうございます~」
と出来上がった写真と令和の記念シールと謎のゆるキャラのキーホルダーをいただいたのどかたちは、
では、さようなら~と手を振る役所の人たちに愛想よく見送られ、うっかりそのまま帰ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!