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「仕事が完成した祝いにおごってやる。
いや……、おごってやるはおかしいな、自分の妻なのに」
「だから、妻じゃな――」
と言いかけたのどかの前で、さっき大家さんが消えた向かいの通りを貴弘は見た。
「近くに歩いていける美味い焼き鳥の店があるんだが」
「……お金は払います」
ついて行くと言ったも同然だが。
この二、三日まともなものを食べていないうえに、焼き鳥は大好きだ。
よく冷えた日本酒がよく冷えた小洒落たグラスで出てきたりししたら、もうなにも言うことはない。
令和のパネルを手にうっかり微笑んでしまったときと同じに、のどかは焼き鳥屋に向かい、流されていった。
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