3798人が本棚に入れています
本棚に追加
/430ページ
「でもさー、なんでアパートまで解約したの。
収入が途絶えるから?
仕事選ばなきゃ、次の就職決まるまで、そんなにかかんないんじゃないの?
幾らなんでも退職金はくれるでしょうし、社長。
引っ越し費用の方が大変じゃない?」
「連休終わってみないとわからないけど。
退職金出してくれるのは、綾太じゃなくて、人事と経理だから、大丈夫だろうけどね」
だが、アパートを更新しなかったのは、クビになったせいではない。
……結婚したからだ。
酔っていたので、うろ覚えだが。
婚姻届を出しに行く途中で、ぐへへへと言いながら、更新しないと大家さんに言ったらしいので、恐らくそうだろう。
だが、この友に、まだ結婚したことを言ってはいなかった。
いつ離婚するかわからないからだ。
「いや、いい古民家を破格の値段で紹介してくれた人が居てね」
と引っ越しの理由らしきものを述べると、
「古民家!」
とすぐに風子は反応する。
「いいねえ、古民家っ。
流行りだもんね、今っ」
いや、たぶん、貴女が妄想した古民家とはかなりかけ離れてると思いますけどね……と思いながらも、友人の夢を壊しては悪い気がして言わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!