あやしい古民家を手に入れました

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「でもさー、なんでアパートまで解約したの。  収入が途絶えるから?  仕事選ばなきゃ、次の就職決まるまで、そんなにかかんないんじゃないの?  幾らなんでも退職金はくれるでしょうし、社長。  引っ越し費用の方が大変じゃない?」 「連休終わってみないとわからないけど。  退職金出してくれるのは、綾太じゃなくて、人事と経理だから、大丈夫だろうけどね」  だが、アパートを更新しなかったのは、クビになったせいではない。  ……結婚したからだ。  酔っていたので、うろ覚えだが。  婚姻届を出しに行く途中で、ぐへへへと言いながら、更新しないと大家さんに言ったらしいので、恐らくそうだろう。  だが、この友に、まだ結婚したことを言ってはいなかった。  いつ離婚するかわからないからだ。 「いや、いい古民家を破格の値段で紹介してくれた人が居てね」 と引っ越しの理由らしきものを述べると、 「古民家!」 とすぐに風子は反応する。 「いいねえ、古民家っ。  流行りだもんね、今っ」  いや、たぶん、貴女が妄想した古民家とはかなりかけ離れてると思いますけどね……と思いながらも、友人の夢を壊しては悪い気がして言わなかった。
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