あやしい古民家を手に入れました

7/43
前へ
/430ページ
次へ
  「どうしても俺と一緒に住まないというのか」  あのあと、焼き鳥屋で貴弘に言われた。 「はあ、仮の妻なので」 「……じゃあ、何処か部屋を借りてやる」  よく冷えた日本酒を呑みながら、貴弘が言う。  カウンターに座ったので、目の前で焼き鳥が焼かれていた。  ああ、この脂が炭火に落ちる音とタレと脂の焦げた匂いがたまらん、と思いながら、のどかは言った。 「安い部屋がいいんですけどね。  お金ないので」 「お前が払わなくていいだろう。  俺が夫だ。  俺が払う」 「いやいや、そんなご迷惑をおかけするわけには……。  自分で払いますよ」 ともめたあと、 「じゃあ、俺の所有している、見たこともない古い家があるんだが。  そこに住んでみるか、家賃安いし」 と貴弘が言い出したのだ。  その問題の古民家だ。  所有者が見たことない家ってなんなんだと思ったが。  成人したとき、ひいおじいさんから祝いにもらった不動産のうちのひとつらしく。  手続きも人任せだったので、よく知らないらしい。
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3818人が本棚に入れています
本棚に追加