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「どうしても俺と一緒に住まないというのか」
あのあと、焼き鳥屋で貴弘に言われた。
「はあ、仮の妻なので」
「……じゃあ、何処か部屋を借りてやる」
よく冷えた日本酒を呑みながら、貴弘が言う。
カウンターに座ったので、目の前で焼き鳥が焼かれていた。
ああ、この脂が炭火に落ちる音とタレと脂の焦げた匂いがたまらん、と思いながら、のどかは言った。
「安い部屋がいいんですけどね。
お金ないので」
「お前が払わなくていいだろう。
俺が夫だ。
俺が払う」
「いやいや、そんなご迷惑をおかけするわけには……。
自分で払いますよ」
ともめたあと、
「じゃあ、俺の所有している、見たこともない古い家があるんだが。
そこに住んでみるか、家賃安いし」
と貴弘が言い出したのだ。
その問題の古民家だ。
所有者が見たことない家ってなんなんだと思ったが。
成人したとき、ひいおじいさんから祝いにもらった不動産のうちのひとつらしく。
手続きも人任せだったので、よく知らないらしい。
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